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2015 年度 実施状況報告書

不活性素子を含む振動子ネットワークのダイナミックスと転移現象の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26400401
研究機関大阪府立大学

研究代表者

大同 寛明  大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70188465)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード結合振動子系 / ネットワーク / エイジング転移 / 興奮性 / 同期転移 / ヒステリシス
研究実績の概要

平成27年度においては、平成26年度に引き続き、以下の課題に取り組み、これまで不明であったヒステリシス領域の突然の縮小の機構を解明した。また、複数の秩序変数の臨界スケーリングについてもほぼ数値的かつ理論的に明らかにした。課題(1)「SNICシナリオの場合におけるエイジング転移の機構の解明」この課題では今のところ興奮性を示しうる位相振動子の集団およびサドル・ノード分岐の標準形の集団を対象としている。どちらも理論的に扱いやすい大域結合系であり、分岐パラメーターは集団内で一様分布となるように選んでいる。本年度は相図に存在するエイジング転移境界付近での系の振舞を数値的に詳しく調べ、重要な結果を得た。1.結合強度がある臨界値を超えるとヒステリシス領域が突然に縮小するという現象の解明(上記の2つの集団のいずれにおいても起こる)。2.複数の秩序変数の臨界指数を数値的に解明したこと。結合強度を大きくしていくと臨界指数は不連続的に変化し、ある値(ヒステリシスが消失する点)を除くと、単調に減少する。これは、結合が強くなるとエイジング転移がより鋭くなるということを意味する。以上の結果は熱力学的極限における理論を用いてほとんど説明できることもわかった。ただし、平均場が持続的に振動する領域(DP2)では Ott-Antonsen の方法が使えないため、今のところ理論はできてはいない。しかし、平均場が一定となる理論解を用いれば1.に述べた現象の機構も説明できる。これらの成果は、やや長い論文となったが、3月の始めに投稿ずみである。また、ある外国の実験研究者と共同してエイジング転移やそれに関わる現象(実験)について研究を開始し、理論面を担当している。興奮性素子を含む少数自由度系のダイナミックスについても学生と共同研究を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず、課題(1)「SNICシナリオの場合におけるエイジング転移の機構の解明」については、平成27年度において大きな進捗があった。これまで、ヒステリシス領域の突然の縮小がなぜ起こるのかが分からなかったが、数値的かつ理論的に詳しく調べた結果、その機構が特定できた。また、秩序変数の臨界スケーリング則についてもより詳細な結果を得て、理論的にほぼ説明することもできた。また、外国の実験家とも共同研究をはじめ、彼らのいくつかの実験結果を説明する理論を作ることもできた。しかし、以上の研究や論文執筆に時間を取られ、本来この年度に開始の予定であった課題(2)「「SNICシナリオの場合における同期転移やその他の転移現象の機構の解明」はまだ手つかずである。これらの事に鑑み、研究計画の現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と判断した。

今後の研究の推進方策

課題(1)「SNICシナリオの場合におけるエイジング転移の機構の解明」二つのモデルの集団でほぼエイジング転移の機構が判明した。しかし、これらのモデルは1自由度系であり、より現実的な2自由度以上のモデルの集団についても調べていく。用いるモデルはすでに予備的な結果を発表済み(2013年度論文)のMorris-Lecar系である。このモデルの大域結合系は理論的に調べるのが困難であるため、数値的に調べる。他のモデルも検討する。課題(2)「SNICシナリオの場合における同期転移やその他の転移現象の機構の解明」この課題については、課題(1)でも用いた理論的に研究しやすい1自由度のモデルを採用し、数値的かつ理論的に研究する。特に重要なのは同期転移境界を正確に定めることである。課題(3)「局所結合振動子系の時空ダイナミックスに対するエイジングの効果の解明」この課題は上記の課題の研究が終了後に取り組む予定である。 追加課題「ランダム結合の振動子集団におけるエイジングの効果」この課題については、ランダム結合系を特徴付ける他の様々な量や性質を研究した上で、エイジングの効果を調べる。

次年度使用額が生じた理由

本来は外国の研究者を訪問し、議論や共同研究をするための旅費として使用する予定であったが、平成27年度は研究や教育以外の公務(管理職、多忙な委員会の委員長など)が急激に増えたため、実現することはできなかった。本研究は基本的には一人で行うものであり、論文の執筆(作図を含む)にもかなり時間が取られたことも影響している。

次年度使用額の使用計画

平成28年度においては、この残額を上述と同じ趣旨で使用する予定である。一つの可能性として共同研究を行っている外国の実験家を訪問するか、彼を研究協力者として招聘することを考えている。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Saint Louis University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Saint Louis University
  • [学会発表] 振動子と興奮性素子の混在する集団のダイナミックスⅤ2016

    • 著者名/発表者名
      大同寛明、西尾一穂
    • 学会等名
      日本物理学会第71回年次大会
    • 発表場所
      東北学院大学泉キャンパス、仙台市
    • 年月日
      2016-03-19
  • [学会発表] 4個の興奮型位相振動子結合系のダイナミックス2015

    • 著者名/発表者名
      酒井健太郎、大同寛明
    • 学会等名
      日本物理学会2015年秋季大会
    • 発表場所
      関西大学千里山キャンパス、吹田市
    • 年月日
      2015-09-16
  • [学会発表] 振動子と興奮性素子が混在する少数自由度系のダイナミックス2015

    • 著者名/発表者名
      西村静恵、大同寛明
    • 学会等名
      日本物理学会2015年秋季大会
    • 発表場所
      関西大学千里山キャンパス、吹田市
    • 年月日
      2015-09-16
  • [学会発表] 振動子集団の感受率2015

    • 著者名/発表者名
      大同寛明
    • 学会等名
      日本物理学会2015年秋季大会
    • 発表場所
      関西大学千里山キャンパス、吹田市
    • 年月日
      2015-09-16
  • [学会発表] Dynamics of large populations of coupled active and inactive oscillators: Aging transition in Hopf and SNIC scenarios2015

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Daido
    • 学会等名
      Dynamics of Coupled Oscillators: 40 years of the Kuramoto model
    • 発表場所
      Max Planck Institute for the Physics of Complex Systems, Dresden, Germany
    • 年月日
      2015-07-28
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] Hiroaki Daido

    • URL

      http://www.ms.osakafu-u.ac.jp/~daido/opue.html

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公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-01-27  

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