研究課題/領域番号 |
26400406
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
湯浅 一哉 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90339721)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 量子制御 / 量子計測 / 量子推定 / 量子観測 / 量子情報 / 統計力学 / 量子光学 / 典型性 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,量子論の世界の奇妙さを際立たせる役者の一人である「量子観測」が,単に「見る」ことにとどまらず,意外でしかも本質的な役割を果たすテーマを追究することによって量子論の奥深い世界に迫るとともに,それらを利用する独創的なアイデアを創出して量子情報技術に貢献することにある.特に,「統計力学の基礎と量子観測」,「観測による量子系制御」,「量子計測」の 3つのテーマを柱に研究を推進しており,3年度目の今年度は以下の成果を得た. ■統計力学の基礎 (1) 非平衡定常状態を記述する純粋状態の典型性を明らかにした研究を継続し,熱浴間に少数自由度系が存在する場合には系の時間発展の不可逆性が重要であることを示し,論文発表した.(2) 非平衡定常状態における量子ゆらぎ定理を検討し,仕事に関してはゆらぎ定理が成立しないものの,エントロピーに相当する物理量に関してはゆらぎ定理が成立することを明らかにし,学会発表した. ■量子系制御 外界からのノイズによって強い緩和を受けるとむしろ系の制御性が向上すること明らかにした研究を継続し,その機構を様々なモデルで検討して論文発表した.その論文は,論文誌の "Editors' Suggestion" に選ばれた. ■量子計測 (1) 計測対象の脇に補助壁を立て,プローブ粒子を計測対象と補助壁との間で多重散乱させて生じる量子干渉効果によって計測精度を向上できることを明らかにし,学会発表した.(2) 最も一般的な多モード線形光学回路に含まれるパラメータを推定するのに最適なガウス型プローブ状態とそれによって達成可能な最大計測精度を明らかにし,学会発表した.(3) プローブを,計測対象に通さない補助系とエンタングルさせることによって計測精度を向上させる可能性を検討し,必ずしも最大エンタングル状態が最適なプローブ状態ではないことを明らかにし,学会発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初計画したテーマで研究を遂行しており,これまでに 11編の論文を発表するとともに,5件の国際会議発表,16件の国内学会・研究会発表に結実するなど,順調に成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画した研究内容に関して困難や障害は生じておらず,引き続き「統計力学の基礎と量子観測」,「観測による量子系制御」,「量子計測」の3つのテーマを柱に研究を推進する.いずれのテーマでも研究が進展しており,複数編の論文の執筆も進んでいる.当初の計画通りに研究を遂行する.
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次年度使用額が生じた理由 |
1万円に満たない額が次年度使用額となったが,次年度の助成金と合わせて使用した方がより効果的と判断した.
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次年度使用額の使用計画 |
出張旅費に加算して支出する.
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