研究課題/領域番号 |
26400407
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山崎 義弘 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10349227)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パターン形成 / 結晶成長 / 流体力学 / 非線形動力学 |
研究実績の概要 |
高粘度薄膜溶液としてアスコルビン酸水溶液に着目し、溶液からの溶媒蒸発による結晶成長に対する考察を行った。特に、ビーズを混入した溶液からの結晶(球晶)成長ダイナミクスを顕微鏡下で観察してきた結果より、以下の結論(1~3)を得た。1:球晶成長時の溶液流動について、湿度が高くなるにつれて、溶液の流動も強くなっていく。なお、この流動は、結晶成長のモードに依らず起こるものであるが、湿度が0%に近い環境では、数週間程度結晶成長が起こらなかったことから、湿度が0%に近づくにつれて、溶液の流動性もなくなると思われる。2:溶液流動に関する成長先端からの距離依存性は、一般的によく知られている溶質の濃度勾配による拡散流に比べて長距離まで流動が起きており、このことは、溶液の流動性に対して、拡散流以外の要因を示唆するものである。我々の実験結果に基づき、一つの可能性として、結晶成長により排出された溶媒の蒸発が、溶液の流動を引き起こしていると考えられる。3:結晶成長中に引き起こされるビーズの運動(溶液の流動)の観察から、溶液の流動に伴い、結晶成長先端で、溶液の流動が停止するほどに薄膜溶液の膜厚が薄くなることが分かった。このことは、溶液流動に対して、しきい値の存在を示唆するものである。さらに、考察から得られたこれらの結論に基づいて、空間1次元のモデルを構築し、定性的ではあるが、実験結果を再現した。なお、以上の結果については、学会での発表、ならびに、査読つきの論文誌で公表済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1:結晶成長時、準安定状態にある薄膜溶液の流動性を定量的に特徴付けることを目的として、薄膜の粘度測定法を確立する点については、溶液の粘度が高すぎるため、光ピンセット法でビーズを捕獲し引っ張り続けるのが困難であることが判明し、新たな測定方法を考える必要がある。2:ビーズを用いた、球晶成長時の溶液の流動性解析については、これまでの観察結果から、定性的ではあるが、流動性に関しての特徴付けを行うことができたと思われ、おおむね目的は達成されたと考えられる。3:これまでの測定結果を踏まえて、系の詳細に依らない、溶液の流動性を考慮した、高粘度薄膜溶液からの球晶成長における1次元モデルを構築することができたことから、理論構築への第1歩は踏み出せたと考えられ、おおむね目的は達成されたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、平成26年度の実施計画を継続して行う。特に、薄膜の厚さ変化を考慮し、球晶の成長モードが一様状態から周期状態に遷移する現象に対する2次元(3次元)モデルの構築を行う。また、薄膜溶液の流動性に対する湿度依存性の測定、特徴付けについても、引き続き、あらゆる可能性を探る。
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