2014年度・2015年度に引き続き、実施計画を継続して行った。これまでの実験では、高粘度薄膜溶液からの球晶成長について、有機分子のーつであるアスコルビン酸水溶液に着目して、成長の様子を顕微鏡下で観察し、その結果を動画で撮影した。また、均一成長する湿度・温度環境下で、球晶の成長速度に対する、薄膜の厚さ(つまり、単位面積あたりのアスコルビン酸密度)依存性を調べた。今年度は、(1)レーザー変位計を導入し、結晶成長時の膜厚をリアルタイムに測定する系を構築した。実際にある環境条件(温度・湿度)で膜厚を測定した結果、結晶成長の近傍で膜厚がうすくなる傾向を確認した。この結果については、現在、様々な環境条件で同じ傾向が観られるかを確認している。今後、この結果については、学会や国際会議での発表、並びに、査読つきの論文誌への投稿を予定している。(2)2014年度から最終年度である2016年度までの総括として、主に昨年度までに得られた結果を乾燥に関する国際会議(The 20th International Drying Symposium)、ならびに、結晶成長国際会議(The18th International Conference on Crystal Growth and Epitaxy)で発表した。また、九州工業大学でセミナーを行い、薄膜の流動性、ならびに、環境の湿度コントロールについて知見を得ることができた。(3)さらに、これまでの実験結果を踏まえて、かつ、球晶の分岐成長を再現するため、ヴィスカス・フィンガリング現象、ならびに、結晶成長における不安定性を参考にして、球晶の成長モードが一様状態から周期状態に遷移する現象に対する2次元(3次元)モデリングを試みた。このモデリングについては、現在進行中であり、今後、学会などでの発表も考えている。
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