研究課題/領域番号 |
26400410
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
金田 行雄 愛知工業大学, 工学部, 教授 (10107691)
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研究分担者 |
石原 卓 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10262495)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 乱流境界層 / 統計理論 / 直接数値シミュレーション / 線形応答理論 / ラグランジュ的繰り込み理論 / 統計的普遍則 / 壁乱流 / 対数則 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は乱流の大規模直接数値シミュレーション(Direct Numerical Simulation:DNS)のデータ解析による検証に基づいて、乱流境界層に対する統計理論を展開することである。 平成28年度、DNSデータ解析については、速度場の3次相関のデータ解析を行った。この3次相関は、ナビエ・ストークス方程式の非線形性のため2次相関の時間発展に重要な役割を果たすものである。その解析によって、速度場の3次相関の特徴的長さは対数則領域でおおむね壁からの距離に比例して変化するが、その依存性は2次相関ほど明瞭ではないことが分かった。また主流方向と壁に垂直な方向の速度の2次相関(uv相関)についても、その特徴的長さは対数則領域でおおむね壁からの距離に比例して変化することを確認した。 乱流の統計理論については、レイノルズ数および壁からの距離が有限であることの対数則領域の統計への影響、とくにエネルギー散逸率、平均流分布への影響を取り入れる理論を、一様等方性乱流中の3次縦速度相関へのレイノルズ数などの有限性の影響を見積もる理論との類似性に着目して、乱流の線形応答理論および2点完結近似(ラグランジュ的繰り込み理論;LRA)の視点から導いた。 2点完結近似式の数値解法については、これまで検討した3次および4次の速度相関の計算法に基づいて対数則領域において簡単な相似則を仮定して数値解析コードを作成し、予備的解析を行った。その際、空間的微分積分についてはLRAと類似の構造を持つ準正規理論による近似式をもとに、とくに境界近傍で特異性をもつ係数の取り扱いに注意を払い計算手法を定め、解析コードを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績」の項で記したように (1)大規模DNSのデータ解析によって、対数則領域の速度場の2点3次相関、および2点uv相関の2点間の相対距離への依存性について定量的解析を行い、それらの特性長さが壁からの距離におおよそ比例するという知見を得た。 (2)統計理論については、線形応答理論およびLRAの視点から、レイノルズ数と壁からの距離が有限であることの対数則領域における統計への影響を取り入れる理論が得られ、また統計理論の数値解法については、壁近傍での特異性を考慮して対数則領域における数値解析コードを実装し、予備的解析を行うことができた。 以上のことから本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、 (1)今年度(平成28年度)得られた対数則領域における統計量への有限なレイノルズ数と壁からの距離の影響の表現のDNSデータによる検証、 (2)圧力場の2点相関あるいはスペクトルについて、壁の存在を取り入れた理論の展開、 (3)統計理論式の数値解法については理論式に現れる多重積分項の効率的計算法を開発し、計算全体の高速化を行う。 また、最終年度に当たるため、これまで得られた成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、数値解析計算の進捗および予算の全体的状況を考慮し、国際発表のための旅費支出を抑えることにした。また、購入予定図書の納品が一部遅れた。これらが次年度使用額の生じた主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は本研究の最終年度であり、国内外における研究発表のための旅費が多く必要であると予想される。次年度使用額は、主としてその旅費にあてる予定である。
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