研究実績の概要 |
平成30年度は、本研究の(1年延長した)研究期間の最終年度にあたり、これまでの研究成果をまとめることに注力した。その結果、主として以下の二つについてまとめることができた。 その一つは、乱流境界層中で単位質量当たりのレイノルズ応力<uv>がほぼ一定となる層(慣性層)の1点統計量<uv>,<vv>,<ww>の統計理論についてである。(ここでu, v, wはそれぞれ速度揺らぎの主流、壁垂直、スパン方向の成分)その理論は、(i)一様等方性乱流中の大きな渦から小さな渦へのエネルギー輸送と、(ii)乱流境界層における壁に垂直な方向への運動量輸送のある類似性に着目して、線形応答理論の考えを用いたものである。なお、その理論は形式的には<uu>および平均流<u>にも適用できるけれども、二平板間乱流の大規模な直接数値シミュレーション(DNS)との比較によれば、その理論とDNSの一致は<uv>,<vv>,<ww>ほどにはよくないことが分かった。このことは<uu>および<u>には非局所的な影響が十分弱くないことと整合している。 もうひとつは平均流速分布が対数則によく一致する領域(対数則領域)における大小さまざまな渦の特性長さ(スケール)に関するものである。これまでほとんど解析されていなかった壁種直方向のものを含めて、いくつかの代表的な長さスケールについて大規模DNSデータの前年度までの解析結果の整理し、これまでのモデルや理論との比較を行い、対数則領域におけるそれらのスケールの方向および壁からの距離への依存性を明らかにした。
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