研究実績の概要 |
H26年度の研究実績は別項「研究発表・雑誌論文」の論文(1),及びプレプリント (2) Y. Kuno, K. Kasamatsu, Y. Takahashi, I. Ichinose, T. Matsui, "Proposal for feasible experiments of cold-atom quantum simulator of U(1) lattice gauge-Higgs model", arXiv:1412.7605. (学術雑誌に投稿中) にまとめられた。 論文(1)では凝縮系物理学研究者向けに格子ゲージ理論を現代的観点からレヴューし,その強磁性・超伝導物質系への応用を概説した。この論文は広く一般に格子ゲージ理論・模型の重要性を喚起するのみならず,本研究のゲージ理論的側面を一般的観点からより深く理解し,研究を強力に推し進めるためにも役だつものとなった。 論文(2)では,2次元光格子上の冷却原子系を格子ゲージモデルのシミュレータとして作動させるための具体的条件(特に密度・密度相互作用)を吟味し,実際に実現可能な実験の設定を複数提案した。また,原子系の時間発展力学を記述するGP方程式を導出し,その解の振る舞いを調べた。 H26年度の本研究の目的・計画は,非等方格子ゲージヒッグスモデルについて (A) その相構造を平均場理論やMCシミュレーションにより決定する,(B) その力学を記述するGP方程式を導出し,解析する,の2点であった。(A),(B)ともに空間2次元の場合については論文(2)で結果を示すことが出来た。論文(2)で得られた結果を見ると,平衡状態の相構造と非平衡状態の相境界は定性的には一致しているが,定量的にはかなりのズレがある。これは非線形・非平衡系の振る舞いは観測量に強く依存する,というもっともらしい仮説の一例を与える点で重要である。
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