研究課題/領域番号 |
26400412
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松居 哲生 近畿大学, 理工学部, 教授 (60257962)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 冷却原子系 / 拡張ボースハバードモデル / 非等方ゲージ・ヒッグスモデル / グロス・ピタエフスキー方程式 |
研究実績の概要 |
H27年度の研究実績は以下の3項目(A-C)にまとめられる。 (A)「研究発表・雑誌論文」の論文(1):ここでは我々の論文 Phys. Rev. Lett. 111, 115303 (2013) の結果「冷却原子系である3次元拡張ボースハバードモデルによって3+1次元U(1)格子ゲージヒッグスモデルの量子シミュレーションが可能である」を,実現がより容易と思われる空間2次元の場合について応用し,2+1次元ゲージヒッグスモデルの (a) 相構造,(b) Gross-Pitaevskii 方程式による電気力線の時間変化,(c) 双極子相互作用による実験系の提案,を行った。 これら(a-c)は実際に実験系でゲージ理論の性質を理解するための具体的指針となる重要な結果である。 (B) 現在投稿準備中の論文「Atomic quantum simulation of a three-dimensional U(1) gauge-Higgs model」では上述のPRL論文で論じた3+1次元U(1)格子ゲージヒッグスモデルについて,(a)より詳細な相構造をもとめ,上記(b),(c)同様,電気力線の時間変化,拡張ボースハバードモデルの実装の提案を行った。 (C) 現在投稿準備中の論文「Extended Bose-Hubbard model and atomic quantum simulation of U(1) gauge-Higgs model in (1 + 1) dimensionsl」では上述のPRL論文の手法をさらに実験が容易と思われる空間1次元の系に応用し,(A), (B)同様に(a)-c)の3点について結果を出した。なお,この1次元拡張ボースハバードモデルは物性系としてそれ自身興味が持たれているので,ゲージ理論との対応枠を超えた領域でも相構造等について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の重要な背景はPhys. Rev. Lett. 111, 115303 (2013) の結果「冷却原子系の標準モデルである拡張ボースハバードモデルは適当な条件の下でU(1)格子ゲージヒッグスモデルと等価であり,従ってゲージ理論の量子シミュレーションが可能である」と言う事実であり,研究のメインテーマは「実験のガイド,助けに成るようにU(1)格子ゲージヒッグスモデルの静的,動的側面をできるだけ詳しく調べる」というものである。これまでのところ,空間1,2,3次元のすべての系について (a) 相構造,(b) 電気力線の時間変化,(c) 実験系の提案,を調べて来た。また,当初懸念されていたゲージ理論の時間発展を記述するGross-Pitaevskii 方程式の定式化については,冷却原子系で直接従来の扱いを実行すれば事足りることもわかった。その意味では研究はほぼ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」でも述べたように,1,2,3次元のすべての系について (a) 相構造,(b) 電気力線の時間変化,(c) 実験系の提案,について結果が出そろった。今後の具体的方針の一つとしては,電気力線とともにゲージ理論の性質を理解するために重要な概念である磁力線,磁気単極子の静的,動的性質を性質を調べていく予定である。さらには,相構造や電気力線,磁力線の時間変化にとどまらず,ゲージ理論の動力学的性質を特徴付けるような物理量の探求とその振る舞いの評価も行いたい。ひとたび量子シミュレーションの実験が始まればそれらの振る舞いはたちどころに知ることができる。前もっての予想を示すことが理論の役割と言える。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の一部(データ保存用ネットワークHDD)を機種変更した際,研究代表者の当初の見積もりより価格が下がったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度,専門的知識の供給を受ける際,より詳細な知識を受けるための増額分とする計画である。
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