研究実績の概要 |
H28年度の研究実績はH27年度の項目(B,C)を引き継いだ以下の2項目(B',C')にまとめられる。 (B')「研究発表・雑誌論文」(1): 我々の論文 Phys. Rev. Lett.111, 115303 (2013) の結果をもとに「3次元冷却原子系(拡張ボースハバードモデル)の実験で3+1次元U(1)格子ゲージヒッグスモデルの量子シミュレーションを行うための準備を整える」という目的のため, (i) 実験系でのパラメータ空間での詳細な相構造,(ii) Gross-Pitaevskii 方程式による電気力線(原子密度)の時間変化,(iii) 双極子相互作用等による実験系の提案,を行った。これら(i-iii)は実際の実験でゲージ理論の性質を理解するための具体的指針となる。また,電気力線,磁気単極子の空間分布を具体的に計算し,閉じ込め相,ヒッグス相などのゲージ力学の諸相の特徴の理解に役立つことを見た。 (C')「研究発表・雑誌論文」(2):上述のPRL論文の手法をさらに実験が容易と思われる空間1次元の系に応用し,(B') 同様に(i-iii)の3点について結果を出した。また1次元拡張ボースハバードモデルはそれ自身興味をもたれているため,ゲージ理論との対応枠を超えた領域でも相構造等を解析した。 (B',C')での電気力線の研究では,シュウィンガー機構に類似の現象が観測され,通常の静的な描像とは異なるゲージ理論の動的な性質の一側面を捉えることができた。ここで使ったGross-Pitaevskii方程式は閉じ込め相での使用に考慮の余地があり,切断ウイグナー近似をもとにした研究を進展させる予定である。さらに最終年度では1-3すべての次元での電気力線の解析を優先させたため,磁気単極子・磁力線の時間変化の解析は結果をまとめる時間が不足であった。今後の研究に引き継ぐ予定である。
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