研究実績の概要 |
ディラック電子系におけるchiral-XY対称性の破れを示す相転移を調べるため、交替磁束を持つ三角格子上における引力ハバード模型を数値的に調べた。この模型では相互作用のない極限において、ディラック電子系を特徴づける線形分散を示す。chiral対称性を持つハーフフィルドの場合、基底状態ではディラック点より下の状態が占有され、半金属相となる。ここに引力相互作用を印加していくと、系は等方的なs波超伝導相へ転移する。異なる物理量から求められた相転移点Uc、および臨界指数νは誤差の範囲内でよく一致する結果となった。また、秩序変数に関する臨界指数βとフェルミオン自由度に関する臨界指数ηも得られ、これによりこのクラスを特徴づける臨界指数の組が全て明らかとなった。また、これらの値はケクレVBS転移で見つかっている指数とよく一致することも明らかとなった。ケクレVBS転移では転移点直上でU(1)対称性が創発するという新奇な量子相転移のシナリオが提唱されており[Nat. Commun. 8, 314 (2017)]、臨界指数が一致するということはこのシナリオを強く支持する結果と言える。これらの結果はPhysical Review B誌に掲載された。また、この模型の解析でも用いた同時刻グリーン関数から準粒子重みを見積もる手法に関してより詳細な検討を行い、別の論文にまとめPhysical Review B誌に掲載された。
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