研究課題/領域番号 |
26400414
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
斎藤 弘樹 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (60334497)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超流動 / 量子渦 / 励起子ポラリトン / 散逸構造 |
研究実績の概要 |
本研究は「光の超流動体」に形成される多様な散逸構造を見出すことを目的としている。これまで散逸構造は古典的な物理系が対象であり、散逸に弱いとされる量子系は考えられてこなかった。一方、最近精力的に研究されている励起子ポラリトン超流動体は、質量を獲得した光子が量子凝縮した、言わば光の超流動体であり、光子が絶えず系を出入りしている非平衡開放系である。本研究は、この新しい系が必然的に散逸し続ける量子系であることに着目し、量子流体と散逸構造という従来独立に発展してきた分野を融合し、「量子散逸構造」という新しい領域を切り拓くことを目指している。 今年度の研究では、大きく分けて二つの進展があった。一つは多成分量子流体中のskyrmionと呼ばれるトポロジカルな構造のダイナミクスに関する研究である。skyrmionは通常運動量を持つため一方向に進行する。そこで二つのskyrmionを互いに向かって進行するように配置し、それが衝突、散乱される様子を数値計算を用いて調べた。その結果、衝突後に二つのskyrmionが複数に分裂して散乱されることを見出した。その数は、整数であるトポロジカルな巻き数で決まる。衝突前の巻き数がnだったとすると、衝突後にはn個のskyrmionに分裂することがわかった。 もう一つの進展は、ポラリトン超流動体における量子渦対の生成についてである。ポラリトン超流動体における量子渦、またはそれらが対になった量子渦対は、これまでの実験で観測されているものの、それらを制御して生成することは実現していない。そこで、励起子ポラリトンを励起する仕方を工夫し、量子渦対を制御された形で生成する方法を提案し、数値シミュレーションで確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子散逸構造という新しい現象を見出すことが本研究の目的である。量子散逸構造において量子渦などのトポロジカルな構造は重要な構成要素となる。そのため、超流動体におけるトポロジカルな構造について広く理解することが本研究にとって必要である。今年度の研究では、それらに対する理解がより一層深まった。以上により、本研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で、ポラリトン超流動体における量子渦対の生成方法を見出したが、その過程で、量子渦対が非常に奇妙な不規則な運動を見せるパラメータ領域があることを発見した。その物理的機構についてはまだ明らかではない。今後、この現象について詳細に調べ、物理的機構を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度購入したGPU計算機が予想より値引きされた。
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次年度使用額の使用計画 |
計算機購入費用または学会出張費として使用する。
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