研究課題
本研究は、これまでにない短期周波数安定度を持つレーザーを開発するにあたり、周波数安定度に限界を与える光共振器の熱雑音を低減させる事を目指す。光共振器のスペーサー材料として、超低熱膨張セラミックに注目し研究を進めた。しかしながら、60 cm以上の共振器長を持つ大型の超低熱膨張セラミック製光共振器スペーサーの作製において、仕様を満たす性能を担保することが技術的に難しい事が分かった。具体的には、厚みのある超低熱膨張セラミックを作製する際に、材料温度を均一に保ったまま焼結する事が極めて難しいために、超低熱膨張材料としての特性が劣化するという問題がある。厚みを薄くしたセラミックを用いる設計においては、大型の光共振器の設計を考えると剛性を保証することは難しく、複雑な構造とその作製に伴う経費を考慮した際に、ガラス製光共振器スペーサーに対する優位性を期待することは困難であることが明らかになった。このことを踏まえ、もう一つの選択肢として考えていた、半導体薄膜を用いた光共振器の作製を推進した。これは、光共振器の熱雑音の最も大きな原因となっている反射膜の機械的Q値を上げるために、従来、高反射膜として用いられてきた誘電体多層膜ではなく、半導体薄膜を用いるものである。ULEガラスのスペーサー(長さ12 cm 太さ 6 cm)の両端に半導体薄膜を溶融石英にオプティカルコンタクトしたミラーを装着した光共振器を用いる事で、この光共振器の熱雑音によって制限される周波数安定度は、1.2 e-16となり、既存の光共振器による周波数安定度の1/10以下であることが明らかになった。最終年度となる平成28年度はこの光共振器および温度調整のための恒温真空槽を開発した。室温より低い温度においても光共振器の温度調整が可能になるようにペルチェ素子を用いて真空槽を冷却する温度調整システムを製作した。
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