研究課題
平成26年度では幾つか研究成果を得たが、代表的なものを以下にまとめる。①ロータス効果(水をはじくハスの葉上で水滴が転がる現象)とペタル効果(水をはじくバラの花弁で水滴が転がらない現象)の機構を明らかにした:同じ物質を用いて両効果を示すモデル表面を作製することに成功した。また、ロータス効果とペタル効果の実験結果に基づき、滑り落ちるときの液滴のポテンシャルエネルギー変化(駆動因子)、水滴をピン止めする物理的・化学的欠陥のピン止め(抑制因子)、滑り落ちる液滴後部側の液体の付着エネルギー(抑制因子)の競合が重要であることが理論的に示すことができた。昆虫や植物の表面で水滴がロータス効果を示すかどうかを理解する上で重要な知見である。②孔への水滴のしみこみ:体積を一定にした水滴をアクリル基板(疎水性材料)にあけた大きさの異なる孔の上にのせ、基板をある高さから落として、水滴が完全に孔にしみ込む条件を実験的に求め、相図を作成した。また、液滴のポテンシャルエネルギー、ピン止めエネルギー、粘性によるエネルギー散逸の競合を考慮することで、実験結果から得られた相図を解釈することができた。このことは、疎水性表面にある孔に液体がしみこむためには条件が揃わなければならないことを示している。学会発表6件(口頭発表4件、ポスター発表2件)、招待講演1件、論文4報の成果を得た。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度では濡れ現象の研究で理論的な理解が不十分であったロータス効果とペタル効果の半定量的な理解が進んだこと、さらに疎水性表面にあいた孔に水滴がしみこむための条件を実験と理論の両面から明らかにできた成果が大きい。これらは動物、昆虫、植物の表面の濡れを観察したときに必ず観察される現象であるが、理論的には未解明であった。その大きな原因は液滴が表面に引っかかるピン止めの強さであるピン止めエネルギーの理論的な取り扱いが出来なかったためであるが、申請者である眞山により定式化されている。今回得られた研究成果により、濡れ現象は表面両力の次元ではなく、自由エネルギーの次元で扱わなければ本質的に理解できないことがますます明らかとなってきた。
すでに昆虫や植物の表面の観察結果を得ており、平成26年度で得られた研究成果を元に動物、昆虫、植物の表面の濡れについて定量的な議論を進めてゆく。
残預金の金額が少なく、基盤Cが基金の扱いであるため無理に年度内に使用せずに、次年度に繰り越して効率的に使用すこととしため。
研究に必要な書籍の購入に充てる。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Chem. Lett.
巻: in press ページ: in press
in press
Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom
Langmuir
巻: 30 ページ: 10643-10650
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http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/ge/chemical/staff_mayama.html