研究実績の概要 |
H27年度においていくつかの研究成果が得られたが、その代表的な成果を以下に示す。
疎水性細孔への水の浸透条件の解明:植物や昆虫の表面は疎水性であり、その表面にミクロンスケールの孔が空いている。このような疎水性の孔への液体の浸透は外注に対する農薬の有効性の問題と密接に関連しているものの、液体が浸み込む条件はまだよくわかっていない。この問題は基本的な濡れの問題の一つである。今回、我々はこの問題を理解するために実験と理論の両面から研究を行った。まず、疎水性基板にミリスケールの孔をあけ(直径0, 5, 10, 15 mm)、水滴を乗せた状態である高さから実験台の上に落とし、水滴がどの条件で浸み込むかについて知見を得た。具体的には水滴をしみこませるために必要な落下の高さが孔の直径に反比例の依存性を示すことが分かった。次に実験結果を理解するための理論的な枠組みを考察した。液滴が疎水性孔に浸み込むための駆動因子は位置エネルギーであり、浸み込みの抑制因子は水の粘性によるエネルギー散逸、表面エネルギーを考慮した。その結果、実験で得られた疎水性孔への水の浸透条件を説明することに成功した。 今回得られた知見は植物や昆虫の体表面へ液体が浸み込む現象を理解するための第一歩となる。
|