研究課題/領域番号 |
26400427
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
辰巳 創一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (50533684)
|
研究分担者 |
野田 泰斗 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00631384)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 液体液体転移 / ガラス転移 / 構造変化 |
研究実績の概要 |
本年は,PFにおいて構造解析を行うとともに,低温用NMRのプローブの開発を行った.以下にその詳細を示す. 1.X線粉末解析による構造変化の観測 高エネルギー研究所のPFにあるBL-8Bにて細孔中に封入されたシクロヘキサンにおいて発見された154Kにおける相転移の前後における構造変化について,細孔径が1.9 nmと2.9 nmのMCM-41に封入されたシクロヘキサンを温度を130 K - 200 Kの範囲で変化させながら,粉末X線回折実験を行うことで調べた.その結果,高分子や,金属ガラスにおいて見られるようなFSDPのような構造の発現は見られなかったが,液体としての1st peakが1.6 A-1にあったのに対し,154 K以下で,2.2 A-1付近に構造変化に伴う新たなpeakが発現していることが確かめられた.このpeakは従来のバルクの相転移によって見られるpeakとは違うQに出ており,新しく発見した転移によるものであると言える.これが具体的にどのような構造変化によるものなのかを明らかにするため,追加実験を行うと共に,今後数値計算による検証を行うことを予定している.以上の内容については,5月に行われる国際シンポジウムなどで発表,議論を行う予定である. 2. 低温固体NMR の測定 低温NMRプローブの開発は、申請時では既存のプローブに吹きつけ方式による冷却機構を組み込む予定であったが、長時間使用に耐えないことと温度の精度が足りないことが判明したため、方針を変更しゼロから設計することにした。そのため遅れが生じているが現時点では設計はほぼ終了し部品の発注と組み立てを行う段階に入っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造変化については,研究実績の概要に示したように,転移点の前後で明確な変化を見出すことに成功し,その具体的な構造についても,ある程度追い込むことが出来た.その一方で,ダイナミクスについては低温用NMRのプローブの作成が若干遅れており,その両者を併せて鑑みて,おおむね順調,とした.
|
今後の研究の推進方策 |
構造変化については,実験でやれることはある程度やったと考えられ,具体的にどのような構造か,同定する段階に入っている.そのために,数値計算や局所安定構造の理論計算などを援用して最終的な結論を出すことを試みているところである. 一方,ダイナミクスについては中性子準弾性散乱実験が,構造のデータが十分にそろっていない,という理由で今までproposalを通すことが出来ていなかったが,PFの結果を受けて,通す目処がたった.出来るならば今年度中に実験を行い,最終的な結論を出すことを目指す.また,低温用NMRの測定については,プローブの完成が遅れてしまっていたが,完成をまって,実験を精力的に行う予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
中性子準弾性散乱の実験が出来なかったことと,海外出張のために,学科の予算を使用することが出来たために繰越金が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
学会発表,実験装置の改良などに余剰金は使用する.また,予定していた準弾性散乱実験を行うことで費用の多くは消費される.
|