研究課題/領域番号 |
26400429
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長尾 秀実 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30291892)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光化学反応 / 電子伝達体 / 会合解離過程 / 光照射ストレス / 酸化還元電位 / プラストシアニン / シトクロムb6/f / 拡散過程 |
研究実績の概要 |
光化学反応に於ける電子伝達体の会合・解離過程と拡散過程を解析・検証することを研究目的として、昨年度に引き続きプラストシアニンの会合解離過程と拡散課程の研究を実施した。また、プラストキノンに関する会合解離過程の研究も実施した。 酸化型プラストシアニン及び還元型プラストシアニンの活性部位中の銅イオン周りの力場パラメータを算出した。また、プラストシアニンと会合解離するシトクロムf活性部位中の鉄イオン周りの力場パラメータも算出した。全原子分子動力学シミュレーションを用いて熱力学的積分法により酸化型プラストシアニンと還元型シトクロムfの自由エネルギープロファイルを計算した。さらに電子移動反応直後を仮定した還元型プラストシアニンと酸化型シトクロムfの自由エネルギープロファイルも計算した。これらの結果から、プラストシアニンからシトクロムfへの電子移動が起こることが検証された。また、プラストキノンに関しては力場パラメータを算出、検証中である。 粗視化モデルを用いてプラストシアニンの拡散過程の解析を試みた。水溶媒中のプラストシアニンの拡散係数実験値を再現する力学的パラメータを見積もった。グラナチラコイド中のシトクロムfからストロマチラコイド中の光化学系Iタンパク質までの平均距離は約200nmであるので、約50マイクロ秒で到達することが示唆できた。現在はプラストシアニン間の相互作用を取り入れた新しい粗視化モデルを拡張している。その準備段階としてプラストシアニン間のタンパク質相互作用を調べるために、酸化型プラストシアニン間の自由エネルギープロファイルを計算した。 これらの研究実施に於いて導かれる酸化還元電位に関する研究成果を論文発表したが、得られた結果の大半はまだ論文に投稿していないが、順次まとめて論文発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しているが、論文発表が遅れている。しかしながら電子伝達反応に関わる研究に付随する酸化還元電位計算に関する論文発表でき、新しいシーズが見出されつつある。プラストキノンに関する力場パラメータの算出が予想以上に時間がかかっている。プラストキノンはプラストシアニンとは異なり、細胞膜内の疎水的環境下で拡散し、会合解離するため、各種力学的パラメータの算出に時間をかけて慎重に算出、検証しているためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、前年度までの研究成果の論文発表をできるだけ早く行うことを目指す。また、本研究の連携研究者や博士後期課程学生の協力を得て、プラストキノンなどの力場パラメータの算出を行い、速やかに遅れを取り戻す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に基づきおおむね順調に研究は進行しているものの、研究成果の論文発表や成果発表などが遅れている。また、パラメータ算出に時間がかかるため謝金用途の実施が行われていないため、次年度へ持ち越し使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度研究成果に対する国内学会発表旅費200,000円及び謝金217,246円とする。
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