研究実績の概要 |
親水・疎水スイッチング界面を構成する高分子であるPNIPAM(poly-N-isopropylacrylamide)は複雑な構造を持つため、これに先立ち、より単純な構造で実験データが多い高分子のPS(polystyrene)、PMMA(polymethyl methacrylate)を用い、メソ-ミクロ連携シミュレーションシステム構築のため全原子シミュレーションと粗視化シミュレーションを連携させて実行した。 全原子シミュレーションでは分子動力学(MD)シミュレーションを用いて高分子1本鎖の重合度を変化させながらシータ溶媒中での広がりの実験値を再現するための計算を行った。ここで得られた原子配置を用いてPS、PMMAを粗視化したときの粗視化粒子間に働く結合力のパラメータを導出した。一つの粗視化粒子に対応するモノマー数を粗視化度とし、その粗視化度が10,20,50のときのパラメータをそれぞれ求めた。 得られたパラメータの妥当性を調べるために、粗視化シミュレーションである散逸粒子動力学(DPD)シミュレーションを用いて、複数本の高分子の溶融状態を再現する計算を行った。得られた結果から高分子の広がりを求めたところ、粗視化度が大きい程、高分子の広がりが実験値に近い値を取ることが分かった。これは、粗視化度が増加し、一つの粗視化粒子に対応するモノマーを数が増えると、粗視化粒子で表される高分子鎖の粗視化粒子間の配置の相関が小さくなり、高分子の性質がガウス鎖に近くなることが原因であると考えられる。 また、高分子モノマーの結合距離の確率分布を調べたところ、DPDの結果では形が左右対称なガウス型分布であったがMDの結果は分布が非対称となっており、分布に違いが見られた。これはDPDシミュレーションで結合力の相互作用にバネポテンシャルを用いていることが原因であるとわかった。
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