研究課題
界面活性剤の吸着膜には、三次元の気体、液体、固体に対応する三つの膜状態、気体膜、膨張膜、凝縮膜が存在する。一般に、イオン性界面活性剤は、親水基間に働く静電反発のため通常は凝縮膜を形成しないとされている。本研究では、陽イオン界面活性剤の吸着膜に界面活性剤と同程度の鎖長のアルカンを混合する手法により、室温付近で、炭化水素鎖間のファンデルワールス相互作用によって凝縮膜形成が誘起される新規な吸着膜相転移を創出するとともに、これを(1)泡沫、(2)乳化系の安定性の制御に応用した。(1)の実験では、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤に直鎖アルカンを添加した吸着膜を用いて、泡沫の安定性を評価するモデル系「泡膜」をシェルドコらの方法にならって作成し、膨張膜から凝縮膜への相転移が陽イオン界面活性剤対イオンの界面への吸着を促進して、電気二重層を圧縮し、泡膜を不連続に薄く(不安定化)することを明らかにした。(2)の研究では、アルカン-水界面の陽イオン界面活性剤吸着膜も気液界面吸着膜と同様の相転移を示す事をまず示し、凝縮膜形成温度の前後でエマルションの時間的な安定性が大きくことなるという大変興味深い知見を得ることができた。また、より実用的な乳化系へもこの研究成果が応用できることを示すために、補助界面活性剤としてイオン性界面活性剤とともに配合されることの多い長鎖アルカノールも、陽イオン界面活性剤と混合凝縮膜を作ることができることを明らかにした。
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