研究課題/領域番号 |
26400435
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
松山 明彦 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (60252342)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コレステリック液晶 / 高分子液晶 / コレステリック液晶ゲル / ネマチックーコレステリック相転移 |
研究実績の概要 |
本研究は,液晶分子と高分子の混合系や液晶分子とナノチューブの様な長い棒状分子の混合系などの”液晶複合系”におけるコレステリック相についての平均場理論を構築し,温度や濃度に依存した相分離や相転移を解明・予言することを目的とする。”液晶複合系”のネマチック相に関する平均場理論を基礎とした研究は国内外において活発に研究されているが,コレステリック相に関する研究は少ない。本研究は,”液晶複合系”における"ねじれ"(コレステリック相)を分子論的に考慮する初めての試みであり,緊急性・独創性を有する。得られる結果は,液晶複合系の新しいコレステリック相の可能性を示すものであり,材料分野や生体材料分野においてきわめて重要となる。 本年度の研究実績の概要は以下のとおりである。(1)液晶分子と高分子の混合系におけるコレステリック相を伴う相分離: 等方相とコレステリック相の二相分離やコレステリック相の二相分離などについて、温度や濃度に依存した相図の計算を行った。(2)外場中における、液晶分子と高分子の混合系: 電場や磁場などの外場によって(1)の相分離がどのように変化するかを調べた。外場の効果によって、ネマチック相ーコレステリック相転移が起こることを見つけた。(3)コレステリック液晶ゲルの体積相転移:コレステリック液晶ゲルやエラストマーの異方的な変形に関する理論を構築した。液晶ゲルの弾性項とツイスト項の競合の結果、様々な変形がおこることを見つけた。(4)コレステリック高分子溶液の二軸性コレステリック相の二軸性について理論を展開した。コレステリック相において、弱い二軸性があることを示した。 以上の4テーマに関しては、論文掲載が確定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、(1)高分子とコレステリック液晶の混合系でおこる相分離を記述する理論を構築し、温度や濃度に依存する様々なの相図を計算した。高分子と液晶分子のキラルカップリングを考慮することで、ピッチ長や弾性定数などを、配向秩序パラメーターと温度の関数として導出することができた。等方相ーコレステリック相の相分離、コレステリック相の2相分離、などの相分離が起こることを示し、いくつかの実験結果を説明できた。 (2)(1)の理論をさらに発展させて、電場や磁場などの外場中でのコレステリック液晶と高分子の混合系について調べた。ピッチ軸と垂直方向に電場を印加することによって、コレステリック相のねじれが解けてネマチック相に相転移(コレステリック相ーネマチック相転移)することを見つけた。 (3)さらに、高分子とコレステリック液晶の混合系の理論で得られたコレステリック相の自由エネルギーと、コレステリック液晶ゲルの弾性自由エネルギーを導出することで、コレステリック液晶ゲルの体積相転移やコレステリックエラストマーの変形に関する研究も行った。液晶ゲルの弾性項とツイスト項の競合の結果、様々な変形がおこることも見つけた。これらの結果は実験を定性的に説明することができた。 (4)コレステリック高分子溶液における、二軸性に関する研究も行った。コレステリック相はとても弱が、二軸性を有することを示した。 (1)ー(4)は、学術論文に掲載確定しており、当初の研究計画通り順調に研究が進んでいることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、コレステリック液晶の混合系、コレステリック液晶とネマチック液晶の混合系、コレステリック液晶とスメクチック液晶の混合系、高分子鎖のコイルーヘリックス相転移、棒状分子とコレステリック液晶の混合系、など様々な液晶複合系のコレステリック相の理解に向けて研究を推進する。 さらに、電場や磁場中での液晶ゲルの挙動や、液晶溶媒中に解けたコレステリック液晶ゲルや、ネマチック液晶ゲルとコレステリック液晶分子の混合系など、液晶ゲルの異方的な変形の可能性について研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の3月に東京出張が2回あったため、科研費で支払う旅費を確保していた。結果的に、その差額として6585円余った。消耗品を買うにしても金額的に少なすぎたので次年度に合わせて使用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
6585円を物品購入に加える計画である。具体的には、計算機のメモリやプリンターのトナーなどで使う計画である。
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