研究課題/領域番号 |
26400439
|
研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
小林 敬道 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (20260028)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 衝撃圧縮 / 粉末物質 / 衝撃誘起発光 / 衝撃圧力 / 粒子速度 |
研究実績の概要 |
粉末物質の衝撃特性は一部のセラミックスや金属を除いて詳しく調べられてはいない。本研究で取り扱う粉末試料の基本的な衝撃物性を押さえておくことは本研究で明らかにしたい発光現象の解明に必要なだけでなく、固体物性基礎データの取得・蓄積という意味でも重要である。本年度は衝撃物性の中でも最も基本的な衝撃圧力と粒子速度の測定を行った。本測定を実施するに当たり、衝撃圧力測定は以前我々が考案したルビー発光を利用したパルス励起時間分解発光分光測定法を用いた。また、粒子速度測定には最近本格運用を始めた速度干渉計(VISAR)を用いた。これら二つの測定はそれぞれ独立に行うが、ターゲット構成において衝撃圧力測定ではルビー窓を使い、粒子速度測定においてはサファイア窓を使うことにより、両測定において全く同じ衝撃圧縮状態の試料に対する衝撃圧力と粒子速度を決定することを可能にするということに着目して考案したものである。その結果、測定結果の信頼性を格段に上げることができた。 上記二種類の測定結果から以下のことが明らかになった。粉末物質中を衝撃波が伝搬すると密度が大幅に増加する。これに伴い衝撃波速度も大幅に増加し、その結果、両者の積であらわされる衝撃インピーダンスが一桁近く増加するということを実験的に初めて明らかにした。この結果は粉末物質中の衝撃波の伝搬挙動、特に反射衝撃波の挙動に関する新たな知見を提供することになった。これは粉末試料の衝撃誘起発光現象が発生する状態を正確に特定するための重要な基礎データとなる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粉末物質の衝撃物性で、これまで実験的にはっきり示されていなかった衝撃インピーダンスの変化や衝撃波が反射する様子など、粉末物質内の衝撃波の伝搬挙動を明らかにすることができた。この結果はChemical Physics Lettersに発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は本格的に衝撃波誘起ルミネッセンスの発光特性実験を行う。YAG:Ce粉末蛍光体を中心に、衝撃波で誘起される新奇発光現象のメカニズムの解明のための実験データ取得に専念する。具体的には、種々の衝撃圧縮条件および粉末試料の初期状態などの実験条件の違いが衝撃波誘起ルミネッセンス発現に及ぼす影響を吟味することにより発光メカニズムの解明を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は一時期装置の使用ができない期間が生じたことなどがあり、予定していた実験の回数を少なからず下回ったことが主な理由といえる。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は本年度に十分な回数の実施ができなかった実験、特に衝撃波誘起発光実験を本格的に実施する予定であり、そのための消耗品代が多く必要になると考えられる。
|