研究実績の概要 |
発生・再生現象における3次元形態の構築過程は自由度が極めて高い多階層システムにより実現されるため、その理解を目的としたシステムモデル構築のためには実験データに基づいてシナリオを絞りこむ必要がある。そのためには、組織-細胞-分子の各階層における動態を定量化して階層間の相関関係を理解することが不可欠であるが、分子・細胞動態と比べて、組織レベルでの変形動態に関する情報は著しく欠如している。本研究では、組織変形動態の理解の最大のネックとなっている計測技術の限界を補完すべく、[1]ベイズ統計に基づき低分解能データから正確に3D組織変形写像を推定するための手法の構築、および[2]ニワトリ脳発生データを用いた提案手法の有効性の検証を行うことをその目的としている。
課題[1]に関して、新しいデータ解析手法の構築に成功した。具体的には、与えられた多様体に対して、任意の座標系で記述されたランドマーク情報からの変形動態の推定を可能にする方法を提案した。これは自身の先行研究の拡張であるが、大きな改善点は選んだ座標系に合わせて、データにのるノイズを座標系に固有に計算される誘導計量によって補正を加えたことである。これにより、解析する側が選んだ座標系によって推定結果が不変となるような手法が完成した。提案手法の有効性は人工データを用いることで確認された。
また、この手法を課題[2]にある実験への応用として、ニワトリ胚を用いた脳初期発生過程のでデータへ適用し、その有効性を明らかにした。これらの結果は、Nature communications誌で発表した[Morishita, et al., Nature Communications, 2017]。
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