研究課題/領域番号 |
26400444
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古村 孝志 東京大学, 地震研究所, 教授 (80241404)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 深発地震 / 地震波伝播 / スラブ内地震 / 異常震域 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
日本列島下に沈み込む太平洋プレート深部で起きる深発地震において、北海道から関東の太平洋岸の広い範囲で震度が大きくなる「異常震域」現象を適切に評価し、プレート内地震とその深発地震により引き起こされる強震動を、3次元波動伝播シミュレーションから適切に評価することを目的として、1)深発地震の広帯域地震波解析とプレート内部構造のモデル化、2)京コンピュータ等の高性能スパコンを用いた大規模な地震波伝播シミュレーションによる観測された地震波形との比較・モデルの検証を進めた。
今年度は、2015年5月30日に発生した、小笠原西方沖の深発地震(h=682 km, M 8.1)のデータ解析と数値シミュレーションを進めた。この地震は、深発地震としては地震の規模も深さも最大級のものであり、神奈川県で最大震度5弱を記録したほか、関東から北海道にかけて大きな震度が広がるなど、異常震域の発生が確認された。しかしながら、これまでに小笠原で起きた深発地震と比べて、異常震域が見られる太平洋岸での加速度の増大の割合が小さく、また地震波形には長い後続相が見えないなど、通常の深発地震とは異なった特徴が見られた。
この地震の震源の深さを考えると、地震は太平洋プレート内部ではなく、プレートの下面付近またはその外で起きたことが考えられることから、数値シミュレーションにより、プレート内・外の二つの場合を考えた地震波伝播シミュレーションを行い、観測波形と特徴の比較を行った。その結果、震源がプレートの外にある場合の計算結果が、強震動の分布や地震波形の特徴に良く一致することが確認できた。また、仮にプレート内部で同規模の地震が起きた場合には、プレート内部の高周波数地震動の強いトラップ・導波効果により、5月30日の地震より2倍程度大きな加速度を持つ強震動分布となった可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間内に、小笠原西方沖の深発地震が発生するなど、本研究の遂行に向けて重要な観測データが得られるなど、地震波形解析とコンピュータシミュレーションの両方を加速させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、地震波形解析と地震波伝播シミュレーションを両輪にプレート内部物性の推定研究を進め、最終年度の研究とりまとめを行う。2015年小笠原西方沖の深発地震について、研究成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
シミュレーション結果解析用の物品購入を計画していたが、データ解析を優先して実施したため、物品の購入の緊急性がなくなったため、導入を翌年に変更した。
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次年度使用額の使用計画 |
シミュレーション結果解析用のサーバ・ディスクを導入し、最終年度の成果とりまとめのための解析に利用する。
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