研究課題/領域番号 |
26400445
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 尚之 東京大学, 地震研究所, 教授 (60224523)
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研究分担者 |
勝俣 啓 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10261281)
川村 光 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30153018)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地震活動 / 摩擦 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
比較的単純な系により複雑な地震活動を再現するモデルに関しては,3自由度のバネ-ブロックモデルを用いたシミュレーションにより,ブロック間相互作用が地震活動に及ぼす影響を調べた.摩擦パラメタ―やバネの強さによって,ほぼ周期的に地震が発生する期間と不規則に地震が発生する期間が交互にあらわれる場合があることがわかった.このような現象は2自由度のバネ-ブロックモデルでは観測されなかった.また,2自由度の場合も3自由度の場合も,非地震性すべりの発生は地震サイクルを複雑にする傾向があることがわかった. 多自由度バネ-ブロックモデルと連続体モデルの比較では,連続体モデルで多くの研究が行われてきた破壊核形成過程をバネ-ブロックモデルで再現した.速度状態依存摩擦則に従う1次元バネ-ブロックモデルに対する数値シミュレーションにより,地震先行現象としての破壊核形成過程の物理を探査した.初期フェーズから加速フェーズ,そして本震に至るまでのダイナミクスを,数値的および解析的手法により精査し,速度状態依存摩擦則に従う一様均質な断層においては常に初期フェーズを伴う破壊核形成過程が先行することを示し,各フェーズの継続時間と核形成長さを評価した. モデルと観測データの比較では,モデルから期待される先行すべりによる地震活動静穏化を観測データから検証した.2004年スマトラ(Mw9.1)地震に先行した地震活動の長期静穏化について1964年から2004年までに発生した実体波マグニチュードmbが5.0以上,深さ100km以浅の地震をISCの地震リストから選び,地震活動度の時間変化を調べた.その結果,本震発生の13年前から地震活動が低下していたことが明らかとなった.その領域は,本震時に最大の滑りが生じた震源域南東部に位置している.このような静穏化は,本震震源域の深部延長の長期的スロースリップによる応力擾乱で説明可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
比較的単純なモデルによる複雑な地震活動の再現,多自由度バネ-ブロックモデルと連続体モデルの比較で進展があった.摩擦パラメタ―の不均一性の効果や多自由度バネ-ブロックモデルと連続体モデルの違いの本質までは解明できていない.また,力学的モデルから期待される非地震性すべりによる応力緩和が地震活動に及ぼす影響を観測データから調べ,モデルの有効性を検証した.地震活動の複雑さに関するデータ解析は今後の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初計画通りに研究を進める.シミュレーションでは,摩擦パラメタ―等の不均一性が,地震発生の周期性や複雑さに及ぼす影響を調べる.また,地震活動データとシミュレーション結果を比較することによりモデルの検証を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究補助のための謝金を予定していたが,研究の進展の状況から,次年度に研究補助を受ける方が有効と判断した.謝金減額分の一部は,ハードディスク破損のためデータ復旧費に回した.
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次年度使用額の使用計画 |
研究分担者間の打合せのための旅費,学会発表や論文発表のための経費,研究補助のための謝金等を予定している.
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