研究課題/領域番号 |
26400449
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
大坪 俊通 一橋大学, 社会学研究科, 教授 (70358943)
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研究分担者 |
松尾 功二 国土地理院(地理地殻活動研究センター), 宇宙測地研究室, 研究官 (80722800)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 宇宙測地学 / GGOS / 衛星レーザ測距 / 地球重力場 / 地球重心 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
人工衛星を使った宇宙測地データの解析において,人工衛星に作用する加速度モデルの精度は徐々に向上してはいるものの,センチメートル~ミリメートルの精度を達成するために十分なモデルは未だ構築されていない.それを解決するため,単純な形をした「経験的加速度」を導入し,加速度モデルに取り込むことで,未知の加速度を吸収させることが一般的である.平成26年度においては,経験的加速度の定数項・周期項が測地パラメータに与える影響を評価した.実在する衛星の軌道に対して,小さく経験的加速度を加えて数値積分を行い,元の軌道との差を計算し,あわせて変数間の相関を調べた.その結果,地球重心のZ成分,地球の重力定数(GM),同じく2次の項 J2 との相関が高いことがわかり,これらを導出する際には経験的加速度変数の適切な選定が重要であることを示すことができた. 地球重力場の1次の項である地球重心位置は,大気・陸水循環,極域氷床変動,海水準変動,といった地球上の質量再分配によって時々刻々と移動している.平成26年度では,SLRデータを使った精密軌道解析を通して2002-2014年の重心移動の推移を導出し,その変動源となる質量再分配の解明に臨んだ.様々な地球物理モデルや他の測地データを使って重心移動を数値的にシミュレーションを行ったところ,地球重心を動かす主な質量変動源は,2002-2007年は極域氷床の融解,2007-2011年は大気変動,2011-2014年は陸水変動であることが分かった.このうち,大気や陸水による重心移動は,モデルによって高い精度で再現できた. このほか,最新の測地衛星 LARES,小型測地衛星 STARLETTE・STELLA の光学応答に関する研究を進め,観測値に対する補正を 1 mm 精度で与えるモデルを構築した.今後,国際的に標準モデルとして用いられることが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測地衛星の光学応答に関する研究は,海外からの要請を受け,前倒しで実施することにし,すでに平成26年度内に小型の測地衛星について成果を論文としてまとめたところである.一方,当初平成26・27年度の2年間の計画としていた High-Low 型の軌道決定については,平成28年度まで延ばすことにする.研究分担者・松尾には平成26年度途中で勤務先の変更があったものの,上記2点以外は,当初の計画に順調に沿っている. 研究代表者・大坪と研究分担者・松尾の間では,3~4か月毎に直接会って本研究に関する打ち合わせを実施するなど,連携を密にして研究を進めている.また,本研究による成果は,積極的に論文および講演会にて発信している.
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今後の研究の推進方策 |
まずは,GNSS 受信機を搭載した低軌道衛星(High-Low 型)の軌道決定が行えるよう,自前で整備しているソフトウェア c5++ の開発を続行する.あわせて,極域における測地観測の増強の意義を数値的に示すため,特にレーザ測距局の新設による効果をシミュレーション解析する.ソフトウェアの開発を進める上では,研究代表者・大坪と研究分担者・松尾の間,さらに他の研究者も含めた緊密な連携が必要となるため,頻繁に打ち合わせを実施することとしたい. 平成27年2月には,地球上の位置の基準を世界各国で連携して維持することが国連総会において決議されたところであり,地球基準座標系の構築・高精度化への寄与も念頭におきながら研究を進めたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展に伴い,当初予想し得なかった新たな知見が得られたことから,その知見を使用し十分な研究成果を得るために,当初の研究計画を変更する必要が生じたことにより,その調整に予想外の日数を要したため年度内に完了することが困難となった.
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次年度使用額の使用計画 |
6月22日から7月1日にかけてチェコ国・プラハにて開催される,測地学・地球物理学に関わる世界的な会合 IUGG General Assembly の参加費あるいは旅費として,平成27年度交付額と合わせて使用する.
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