本研究では、衛星重力データおよび衛星高度計データに、大気気候モデルや地上での測地・地形・雪氷データなどを組み合わせることにより、東南極・エンダービーランドでの流域スケールの氷床質量変動を高分解能で捉えるとともに、地上でのGNSSや重力データなども用いることで、氷床変動がどのように起こっているかを明らかにすることを目的とした。 一般に、南極氷床の質量収支の研究で用いられる衛星重力データについてはGIAモデル補正に関する曖昧さ、衛星高度計データについては表層の積雪やフィルンの密度に関する曖昧さ、また、気候モデルについてもキャリブレーションに関する曖昧さなどがあるため、これらのデータを組み合わせることで、その曖昧さを減らすとともに、定量的な精度見積を与えることが重要である。 そこで、本研究では、特に顕著な増加傾向が見られる2008年から2010年の質量収支に着目し、この変動がこの期間の降雪量の増加で説明可能なのか、あるいは白瀬氷河の流量の変化(水平方向の流出入量変化)を伴っているのかを、表面フィルン層の質量収支モデルおよびレーダー衛星高度計による表面高度変化データとの比較から検討を行った。 その結果、変動はほぼ降雪量増加のみで説明可能であり、水平方向の流出入変化はほとんどないか、あるいは存在するとしても、GIAモデルの誤差と同程度であることが判明した。本研究では、さらに、衛星データやモデルデータとは独立な、日本南極観測隊によって実施された雪尺観測データとも比較を行い、上記結果が妥当であることを示した。
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