研究実績の概要 |
豊後水道において、約6年の間隔で周期的に発生しているスロースリップ現象の発生場の解明と、構造の時間変化検出のためのモニタリング観測網の構築を目的として、3ヵ年の観測的研究を実施した。平成28年度は、スロースリップの主すべり域の中心部でのデータを取得するために、2つの離島ならびにS/Nの悪かった1箇所の計3点で広帯域MT観測を実施した。各観測点において、電場2成分、磁場3成分の自然電磁場変動を2週間程度連続収録した。平成26年および平成27年の観測を含めて、計31観測点のデータについて、BIRRP(Chave&Thomson, 2003)プログラムを利用した時系列再解析を行った。周期300Hz~10,000秒の非常に広帯域の周期帯において良質なMT応答が推定された。インダクションベクトルや位相テンソル楕円(Caldwell et al., 2004)から、スロースリップの主すべり域を取り囲むような比抵抗構造が示唆されたが、それを確かめるために、MT応答の回転不変量(determinant; Rung-Aruwan et al., 2016; Berdichevsky&Dimitriety, 1976)から各観測点下の1次元構造を推定し大局的な不均質構造を確認した。主すべり域の縁辺部に低比抵抗領域が存在する可能性、および内部領域は相対的に高比抵抗ではあるものの最内は低比抵抗となる様相が確認できた。 平成26年度末から開始した京都大学防災研究所宿毛観測室におけるMT連続観測について、長期運用試験を継続した。磁場計測は非常に安定した測定を維持できることは実証できたが、電場計測については、長期運用による電極の劣化ならびに周辺環境変化(人工物の設置など)に絶大な影響を受けること課題であることが判明した。連続データについては、公開可能である旨、関連コミュニティに周知した。
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