研究課題/領域番号 |
26400456
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中久喜 伴益 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10263667)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水輸送 / 地球深部 / プレート沈み込み / マントル対流 / マントル遷移層 / 核・マントル境界域 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は水が上昇してくる地点と考えられるマントル遷移層や核・マントル境界の物性や流動則(レオロジー)がマントル上昇流の発生を通して水の帰還に与える影響を数値シミュレーションにより明らかにすることである。本年度はマントル遷移層からの水の帰還と下部マントルへの水輸送に注目した研究を行った。マントル物性のうち、(1) 密度の低下、(2) 粘性の低下、(3) 相転移の準安定相の安定性、(4) 細粒化した結晶の成長速度、の効果について明らかにすることを目標としていたが、(1)と(2)についてのみ研究を行い、(3)(4)については研究が行えなかった。 水による密度が低下については、密度の低下が沈み込むスラブの沈み込み速度を下げることにより、深部に運ばれる水の量に影響することが分かった。島弧領域のプレートの厚さが常に薄く保たれ、沈み込む速度が増加すると同時に、スラブが後退しやすくなることが分かった。沈み込み帯深部に輸送される水の総量は、マントルウェッジの形状及び沈み込みの速度によって決まることも示した。 さらに、マントル深部へ運ばれる水の量を決定する重要な物理パラメータとして、下部マントルの最大含水率、660km相境界付近での水の移動性があることが分かった。水が移動しやすい場合には、上下マントルの最大含水率の比の5倍程度の水が下部マントルへ運ばれること、それ以外の水は固体の水を含んだプルームを形成して上昇することが分かった。さらに、スラブの660km境界での伏角が90度を超えると、水がスラブの中心側へ入ることが分かった。スラブの中心は低温であり、下部マントルでも含水鉱物が形成されることが物性実験から示されている。このため、下部マントルへより効率的に輸送される可能性があることを意味している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は目標としていた課題のうち、(1) 密度の低下、(2) 粘性の低下、のみについて研究を行い、(3) 相転移の準安定相の安定性、(4) 細粒化した結晶の成長速度については研究を行えなかった。しかし、次年度作成する予定だった下部マントル深部の物理を取り入れたシミュレーションプログラムを本年度中に作成した。すなわち、核マントル境界域からの水の帰還に注目したモデルを構築するための準備を行った。具体的には、圧力依存性を持つ熱膨張率、核・マントル境界域での化学的不均質、ポストペロフスカイト相転移をモデルに組み込み、それらの影響についてのシミュレーションを開始した。このため、ほぼ予定通りの進捗状況とした。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、主として、核マントル境界域からの水の帰還に注目したモデルを構築する。これについては、既に準備を行ってしまったので、即座にシミュレーションを開始する。26年度に研究を行えなかった課題についても研究を開始する。そのために、すでに利用しているプログラムに相転移が温度によって有限の時間で起きる効果を取り入れ、シミュレーションを行う。また、26年度の研究から明らかになった、マントル遷移層における水が有限の移動速度を持つ効果についてもモデル化の方法を検討する。
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