研究実績の概要 |
地球内部の水循環を長期にわたって継続させるメカニズムを理解するため,水循環を含むマントル対流の数値シミュレーションを行った。研究を実行するため,必要な2つの長時間沈み込みモデルを開発した。1つは粘性の影響によって沈み込みを再現できる高分解能モデルであり,もう1つはマントル全体の水循環を計算するためにレオロジーを簡略化したモデルである。前者のモデルでは,水がマントル岩石へ与える影響として,密度の低下および 粘性の低下を,さらにマントル物性として410kmおよび660km, ppv相転移,および660km相転移に伴う鉱物の細粒化を考慮した。 開発したモデルを用いて、地球内部の水循環について以下のようなことが明らかになった。(1) マントルが持つことができる最大の含水量は上部マントルの高温鉱物の最大含水率あるいは下部マントル上部の最大含水率のどちらか小さい方で決まる。含水量はその値にマントルの質量をかけたものにだいたい等しくなる。 (2) マントル遷移層全体が最大含水率まで含むことは起こらない。含水量が増大するのは沈み込み帯の近傍だけである。 (3) マントル深部へ運ばれる水の量を決定する重要な物理パラメータとして、下部マントルの最大含水率、660km相境界付近での水の移動性があることが分かった。 (4) マントル全体の含水量の増加速度を知るためにはマントルの混合速度を明らかにする必要がある。 (5) 現在のプレート運動速度でプレートが沈み込んでいるとすると,海1つ分の質量の水をマントルに取り込むには40億年程度の時間がかかる。
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