研究課題/領域番号 |
26400457
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
亀山 真典 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (70344299)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マントル対流 / 数値シミュレーション / 大きなマントルウェッジ / 停滞スラブ |
研究実績の概要 |
本年度は、2次元円筒座標系によるスラブ沈み込みモデルを用いた数値シミュレーション、及びマントル内火成活動を組み込んだ3次元対流シミュレーションプログラムの開発、の2つを実施した。 2次元スラブ沈み込みシミュレーションを広いパラメータ範囲で系統的に実施した結果、地震波トモグラフィーで観測される様々なスラブの形態を再現するものが得られた。特に深さ 660 km 不連続面におけるスラブの挙動・形態は、(1)下部マントルに即座に「貫入」、(2)不連続面で「蓄積」、(3)不連続面上に「浮揚」、(4)不連続面で水平に横たわるように「停滞」、(5)「停滞」したのちに下部マントルへ「崩落」の5つのタイプに分類することができた。加えて、先行研究によりプレート収束速度と沈み込みの継続時間が分かっているスラブについて、トモグラフィーによる観測結果とシミュレーション結果を比較し、スラブの形態を再現するパラメータの組み合わせの調査を行った。その結果、660 km 不連続面のクラペイロン勾配に関する強い制約は得られなかったものの、そこでの粘性ジャンプは10倍以下であるのが最も適当であると分かった。さらにこの条件に加えてプレート収束速度と沈み込みの継続時間も考慮すれば、沈み込んだスラブの形態から海溝後退速度を有意に制約できることが分かった。このことはプレートとプレートの相対速度という観測量からプレートの絶対速度を導き出す上で、沈み込んだスラブの形態が重要な制約条件になり得ることを意味している。 またマントル内火成活動を組み込んだ3次元対流シミュレーションプログラムの開発では、対流する固体マントルの上昇域で減圧融解によって生じた液相マグマが浸透流として移動する過程をモデル化するアルゴリズムを考案・実装した。簡単な設定での予備的計算により、マントル内火成活動と固体マントルの対流を結合させた3次元シミュレーションが可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に実施した、広いパラメーター範囲での2次元スラブ沈み込みシミュレーションによって、様々なスラブの形態が再現できたことは、地球科学的に重要な進展であった。加えて、地震波トモグラフィーでみられるスラブの形態と、ここで再現された下部マントル内でのスラブの形態の比較対照によって、660 km 不連続面や下部マントルの物性のみならず、海溝後退速度を有意に制約できたことは、今後の3次元シミュレーションで実施すべきパラメーター範囲の制限においても大いに役立つものとなる。 またマントル内火成活動を組み込んだ3次元対流シミュレーションプログラムの開発は、それ自体がマントル対流シミュレーションにおける大きな技術的成果である。こうした火成活動とマントル対流とを結合させた系のシミュレーションでは、時間刻みの制約や両者のフィードバックに伴う計算不安定が存在することもあり、これまでは主に2次元モデルによって基本的な性質を解明することに留まっていた。簡単な設定であるとはいえ、その3次元計算に成功したことは、「大きなマントルウェッジ」のより高度なモデル化を可能にするものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は基本的には、今年度の技術的・地球科学的成果をさらに発展させる方向で進めていく。具体的には、(1) 我々が既に開発・活用している BMW 内流れ場に関する2次元シミュレーションモデル内の有用な機能を抽出して3次元シミュレーションプログラムに導入する作業の継続、及び (2) 沈み込みスラブの挙動・形態あるいは BMW 内のダイナミクスに関するシミュレーション研究の実施、が中心となる。その際、(1) については当初計画していた3次元箱型形状モデルのみならず、3次元球殻形状モデルへの適用も図っていきたい。また (2) については、3次元モデルによるシミュレーションに加えて、既存の2次元モデルを用いたシミュレーション研究も並行して進めていく。これによって広汎なパラメータ空間を網羅的に探索するだけでなく、3次元シミュレーションを実施するパラメータの効果的な選別に役立てていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内の関連研究者との研究打ち合わせのための国内出張にかかる経費の使途を優先すべく、予定していた研究成果発表のための海外出張を控えたところ、両者の差額が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内の関連研究者との研究打ち合わせのため、あるいは次年度以降に本格化する3次元シミュレーションにかかる計算機資源の増強のための経費として使用する予定である。
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