研究課題/領域番号 |
26400458
|
研究機関 | 会津大学 |
研究代表者 |
小川 佳子 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (90372656)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 月探査 / 地理情報システム / かぐや / スペクトルプロファイラ / 可視化 / 可視―近赤外スペクトル / 鉱物 / 宇宙風化 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の月周回探査機「かぐや」等によって得られた高精度で多様なリモートセンシングデータに対して、簡便な解析を可能とする、Web地理情報システム(Web-GIS)の構築を目指している。そして同時に、このWeb-GIS を用いて、月面全球の物質分布・構造・地殻活動について、月探査データを存分に活用することにより、明らかにすることを目標としている。作成するシステムやプロダクトは適時月科学研究者に開放・提供する予定である。 今年度は様々な種類の探査観測データを横断的に利用した、効果的な可視化と効率的な解析を実現するためのステップとして、具体的に下記の2つに取り組んだ。 「かぐや」に搭載された、可視-近赤外連続分光計:スペクトルプロファイラのスペクトルのデータのビューアである月面Web-GIS「月光」の拡張(参照データの追加)と運用そして英語版「GEKKO」の公開を行った(2015年9月より. http://fructus.u-aizu.ac.jp/gekko_info/en/index.html)。「月光」は、今後、月面主要鉱物や宇宙風化度マップの作成と公開に向けた拡張システムの基盤として位置づけられるものである。英語版「月光」については、計3つの国際学会・ワークショップ(後述13. 研究発表参照)における口頭発表等を通じて、欧米の惑星科学コミュニティーに積極的にアピールし、ユーザ拡大をはかった。早速NASA Lunar Mapping and Modeling Portal (LMMP)よりcollaborationの打診を受けるなど、好評価を得ている。一方で、様々な種類の探査観測データを横断的に利用した統合的な月表層解析を可能にするためのアルゴリズム開発を進めた。月面swirlと呼ばれるアルベド特徴をテストケースとして、日本の月周回衛星「かぐや」の分光・画像データを主に用いながら、アメリカの最新の月探査機Lunar Reconnaissance Orbiterの高度観測データを取り入れ、統合的な月探査データ解析を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膨大な量の探査データ処理や解析を可能にするためのハイパフォーマンス・コンピューティング環境の整備が、必要な周辺設備の調整不足により、完了していない。本研究では、計算機内部で並列演算を実現する装置である汎用計算用GPU: Graphics Processing Unit(画像処理装置)を利用した比較的新しい高速化技術の導入を選択したが、その本格導入が遅れている。そのためにGPU計算機リソースを利用した、可視-近赤外波長域連続スペクトルの包括的な解析や、全球を範囲とした月探査データの統合解析について、予定通りの進捗を得られていない。来年度初旬には、計算機を収納する諸設備環境を整え、GPU環境の本格導入を完了し、早々に効率的な解析処理を実施したい。
|
今後の研究の推進方策 |
GPUコンピューティングを専門とする研究者や業者と連携しながら、膨大な量の探査データ処理や解析を可能にする計算機環境を早急に整える。そのGPU計算機リソースを利用して、具体的に以下の2つを行う。(1) 従来研究[Ogawa et al., 2011]で既に開発済の、可視-近赤外分光データから吸収帯特徴量を抽出するアルゴリズムの並列化計算を実施し、月全球に適用する。 (2) 月全球を範囲とする様々な種類の探査観測データを横断的に利用した統合的な月表層解析に取り組む。テストケースとして今年度確立した月面swirl探索スキームを月全球のデータに適用する。(1)(2)の結果として得られる高分解能の月面主要鉱物・宇宙風化度マップを運用中の月面Web-GIS「月光」に統合する。さらに「月光」をデータ可視化・解析を実現するシステムへと発展させていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、昨年度におけるGPUの試験的導入実績と評価に基づき、GPU並列計算機環境の本格的導入を試みたが、計算機を収める設備調整不足により、環境構築完了に至らなかった。来年度早急に並列計算機環境を整備し、月面の可視-近赤外波長域連続スペクトルの包括的な解析および月探査データの効率的な統合解析を実施する。月全球の月面主要鉱物・風化度マップを作成する上で高性能計算の実現は鍵となっている。
|
次年度使用額の使用計画 |
探査データ解析を対象としたGPU並列計算を実施するための周辺設備整備と計算機環境整備を再優先で行う。そのためのハードウェア購入費用と設置費用等を計上する。また、スペクトル分解を並列計算で行うためのソフトウェア開発に必要な経費を計上する。一方、計算結果を新しいデータプロダクトとして、Web-GIS「月光」に登録する予定であり、そのために必要な人件費等を計上する。また、国内外でさらにユーザを拡大・発掘するために学会等で発表する上で必要な国内・外国出張旅費、並びに、学術雑誌での論文掲載のための英語校閲料、論文投稿料を計上する。
|