研究課題
本研究は、日本の月周回探査機「かぐや」等によって得られた高精度で多様なリモートセンシングデータに対して、簡便な解析を可能とする、Web地理情報システム(Web-GIS)の構築を目指すものである。そして同時に、このWeb-GISを用いて、月面全球の物質分布・構造・地殻活動について、月探査データを存分に活用することにより、明らかにすることを目標としてきた。作成するシステムやプロダクトを適時月科学研究者に開放・提供してきた。最終年度である今年度は様々な種類の探査観測データを横断的に利用した、効果的な可視化と効率的な解析を実現するための仕上げと今後の新たな展開を見据えて、具体的に下記に取り組んだ。「かぐや」に搭載された、可視-近赤外連続分光計:スペクトルプロファイラデータビューアである月面Web-GIS「月光」(http://fructus.u-aizu.ac.jp/gekko_info/en/index.html) に、種々の統計解析機能を新たに実装した。「月光」は、月面主要鉱物や宇宙風化度マップの作成と公開に向けた拡張システムの基盤として位置づけられるものである。ユーザがデータを閲覧し、さらに、目的に応じたリアルタイム解析を実施するためのシステムを構築した。現在運用中の「月光」は、アジア・欧米の惑星科学コミュニティーに浸透し、ユーザは5 カ国13機関に及ぶに至った(2017年5月現在)。また、さらに、様々な種類の探査観測データを横断的に利用した統合的な月表層解析を可能にするためのアルゴリズム開発を進める上で、深層学習に着目した。月面swirlと呼ばれるアルベド特徴をテストケースとして、「かぐや」の分光・画像データを主に用いながら、アメリカの月探査機の高度観測データを取り入れ、統合的な月探査データ解析を実施した。その中で統合解析における深層学習の有効性の評価を試みた。今後Web-GIS「月光」に深層学習解析機能を搭載する可能性を模索していきたいと考えている。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
宇宙科学情報解析論文誌
巻: 5 ページ: 111, 122