研究課題/領域番号 |
26400460
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
的場 澄人 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (30391163)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アイスコア / 古気候復元 / 小氷期 / 北部北太平洋 / アラスカ / カムチャツカ |
研究実績の概要 |
(1)アラスカオーロラピークアイスコア解析:アラスカ山脈オーロラピーク近傍氷原で採取された全長180m深のアイスコアの全層解析を行った。分析項目は、水同位体比と化学イオン種濃度である。水素同位体比とは明瞭な季節変動を示し、この季節変動から年層を勘定し、アイスコアは180m長で1666年までの記録を保持していることが推定された。この年層の厚さを流動を加味して年間涵養量に換算したところ、年間涵養量は1900年以降急激に増加していること、増加トレンドを削除した変化は、太平洋十年規模周期振動(PDO)指数と同期して変化していることが分かった。また、水素同位体比の値は、アラスカの気温とアリューシャン低気圧の勢力の指標になることが推定され、それもPDO指数と同期して変化していることが分かった。ここまでの成果を、国際誌Climate of the Pastに発表した。さらに、現在のアラスカの積雪中の過剰水素の値が、水蒸気の供給ルートによって変化することを明らかにし、アイスコア中の過剰水素の値の変化は、アラスカに供給される水蒸気の全量に対する西からの供給量の比の変化を示すことを明らかにした。ここまでの結果を用い、アラスカ地域の小氷期中期から現在にかけての気温、降水量、水蒸気起源の変化を復元した。 (2)北部北太平洋地域の山岳アイスコア:これまで採取された山岳アイスコアの掘削技術、掘削オペレーションなどの総括と問題点の提示を行い、国際誌Annals of Glaciologyにて成果を発表した。 (3)グリーンランド氷床沿岸部浅層アイスコア:グリーンランド氷床北西部2200m地点で採取されたアイスコアの化学解析を行った。現在約100年に相当する試料の分析が終了している。水同位体比と海塩成分は明瞭な季節変動を示し、その季節変動から約100年間の降水量の変化を復元した。その結果、過去100年間に降水量の変化にトレンドは見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、アラスカ山脈オーロラピークアイスコアの分析と解析は順調に行われ、全長180m長のアイスコアを高分解能で分析ができ、約300年間の古気候情報の抽出に成功した。また、その成果を国際雑誌、Climete of the Pastに出版することができた。また、当初の計画には含まれていなかったが、グリーンランド沿岸部でのアイスコア採取に成功し、1000試料以上の分析を終え、約100年間の古気候情報の抽出に成功した。 しかし、26年度に予定していた、アイスコア試料自動融解の開発が達成されなかった。現在、融解ヘッドの開発は順調に進んでおり、今年度内での完成に向けて、調整を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、高時間分解能での解析を短時間で可能にする、アイスコア自動融解装置の開発を行う。また、解析が途中である、グリーンランド氷床浅層アイスコアと、アラスカランゲル山アイスコアの化学分析を進め、過去100年間の北部北太平洋地域の環境変動を復元する。
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