研究課題
南極ドームふじ深層氷コア(全長3035.22m、最深部年代約72万年前)の1093.00-3003.50m(推定年代約6-70万年前)の区間、80試料中のAl、Fe、Mn、Na、Mg、Ca等の金属成分全濃度(粒子態濃度+溶存態濃度)の測定を行った。得られた結果とこれまでに得られている結果とを合わせて、過去72万年にわたる気候・気温変動とエアロゾルのフラックス・組成変動との関連性、ドームふじ深層氷コア中の金属成分と微粒子濃度について解析をすすめ、論文・学会発表を行った。次期深層氷コア掘削の候補地である新ドームふじ基地設営予定地周辺から南緯80度までの65地点で得た氷床表面積雪につき金属成分全濃度を測定した。結果を解析して新ドームふじ基地候補地周辺におけるエアロゾルの輸送・堆積環境を明らかにし、その成果を学会等で発表した。ドームふじ深層コアから過去の南極氷床表面におけるアルベド変動の復元を試みるため、雪氷中金属濃度とアルベド変動の関係を明らかにする実験も前年度から継続して行った。26年度に購入した分光放射計により、2016-2017年冬期に山形県内各地の積雪地において、雪面アルベド測定と表面積雪採取の同時観測を行った。現在、積雪試料中の金属成分分析を行っているところであり、結果が得られ次第、雪氷中鉱物粒子量とアルベド変化の関係のモデル化を試みる。最近2000年程度の気候・環境変動を明らかにするため、昨年度、第57次南極観測隊の氷床中層掘削に大学院生を参加させ氷床コアと積雪試料を採取した。積雪試料中の金属成分は現在分析中であり、氷床コアについては、今年度解析予定である。別に得られるイオン成分、安定同位体等の結果と合わせて解析し、人類活動が活発化した過去2000年間における気候・環境変動についても明らかにする予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、1.南極氷床に空輸された粒子成分とイオン成分の分別解析を行うこと、2.陸・海起源エアロゾル濃度・組成変動と気温や温室効果気体濃度変動との関係を明らかにすること、3.急激な気候変動における陸・海起源エアロゾルの役割を定量的に評価することの3項目である。26年度から28年度までの「研究実施計画」として、ドームふじ深層氷コア約300試料の分析、国内外の積雪地や氷河・氷床における表面積雪中金属成分とアルベドの測定を行って、目的1と2を達成することを計画した。28年度終了の現時点で、ドームふじ深層コアについては、約200試料の分析と解析が終了した。当初の処理計画より100試料ほど少ないが、現時点での解析に必要なプロファイルは得られており、さらに、深層コアの解析に付随する必要な情報として、南極氷床表面における金属成分の地理分布測定、山形県内の積雪地における雪面アルベド-雪中金属濃度の関係に関する基礎実験、グリーンランド氷床中金属濃度の比較測定も並行して行うことができているため、達成度は「おおむね順調に進展している」とした。
平成29年度は、南極ドームふじ深層コアの金属成分分析、山形県内積雪地における雪面アルベド-雪中金属濃度の同時測定を継続実施する。ドームふじ深層コアについては、変動の全体像を概ね把握できたので、29年度は間氷期から氷期への移行期の試料を中心に分析をすすめる予定である。氷床中金属濃度の両極比較のためグリーンランド氷床掘削により得られている氷コア中の金属分析も行う予定である。また、第57次南極観測隊によって得られた中層コア、積雪の金属成分、イオン成分、安定同位体等を測定し、人類活動が活発化した過去2000年間における気候・環境変動を解析する予定である。平成30年度は、ドームふじ深層コア、グリーンランド氷床コア、山形県内積雪等につき、さらに分析を進めて気候・環境変動解析の精度を高める。最終年度であるので、前年度までに得られた結果の総合的解析を行い、急激な気候変動にともなうエアロゾルの組成・降下量の変動と地殻・海洋環境等との関連性等につき発表する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件)
Science Advances
巻: 3 ページ: e1600446
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