研究実績の概要 |
本課題の目的は、地球および金星の双子渦の力学過程を解明することである。金星極渦中の双子渦の研究では,モデルで得られたスーパーローテーションやポーラーダイポールを詳しく調査した。金星中層大気GCMの計算結果を解析し、「極域の1日潮と傾圧波の重ね合わせによる極域渦(ダイポール,モノポール,トリポール)の変動および形成メカニズム」に関する研究成果をまとめた(Yamamoto and Takahashi 2015, Planet. Space Sci., in press).東西平均場と極域の1日熱潮汐波を足し合わせると,極から少しずれた楕円形状をした高温域が形成される(モノポール).この楕円高温域に東西波数2の傾圧波が重ね合わさるとダイポールが形成される.この東西波数2の波の位相がずれたり,振幅が弱くなるとダイポール構造が崩れる.このような,1日熱潮汐波と波数2以上の不安定波との重ね合わせが,金星で観測される複雑で不規則な渦パターン形成の力学過程の1つを示すものと考えられる.また、金星大気GCMの解像度および天文パラメーター依存性に関する予備実験も行った.簡略化した設定で,解像度を上げた実験を行い,双子渦の背景場として重要なスーパーローテーションや子午面循環の感度を調査した.(途中経過は,AOGS2014で学会発表).中層大気の雲層加熱で駆動する惑星大気大循環について調査し,スーパーローテーションや間接循環の自転依存性を調査した.大気大循環パターンや水平渦熱輸送の自転依存性が大きく,この自転依存性はTEM循環場やEPフラックスでも明瞭に現れる (途中経過はEPSC2014で学会発表).日本列島を挟んだ双子渦の力学の研究では、二つ玉低気圧の顕著事例の中から2事例を選定し、メソ気象モデルを用いた数値実験を行った。これらの計算結果が次年度以降の解析データとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金星極渦中の双子渦に関しては,金星中層大気GCMで得られたスーパーローテーションやポーラーダイポールを詳しく調査し、その研究成果が学術雑誌に受理された(Yamamoto and Takahashi 2015, Planet. Space Sci., in press).また、金星大気GCMの解像度および天文パラメーター依存性に関する予備実験を行い、それらの途中経過をAsia Oceania Geosciences Society 11th Annual Meeting (AOGS2014, 札幌), The European Planetary Science Congress 2014 (EPSC2014, Cascais,ポルトガル), 日本地球惑星連合学会(横浜)、日本気象学会秋季大会(福岡)等で学会発表した。日本列島を挟んだ双子渦に関しては、日本列島を挟んだ双子渦(二つ玉低気圧)の顕著事例を2つ選定し、その数値実験を行い、次年度の詳細な解析に必要な数値実験をおおむね終わらせた。
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