「日本付近でみられる二つ玉低気圧」と「金星極域のポーラーダイポール」は一見別々の現象に見えるが、力学的には共に帯状流(地球の偏西風ジェットや金星のスーパーローテーション)の中で頻繁に出現する双子渦といえる。本研究の目的は、これらの渦のペアを『高速風を伴う双子渦』と位置づけ、(i)現実的で複雑な気象シミュレーションと(ii)素過程を抽出した理想化実験から『双子渦や高速流に関連した現象の力学』を明らかにすることである。 目的(i)に関しては、二つ玉爆弾低気圧の形成要因を明らかにするため、下部境界条件を変えた実験を行った。発達初期において南北に伸びた下層の気圧の谷が双子渦形成に重要であることがわかった。 目的(ii)ついては、厚い雲で覆われた惑星を想定した大気大循環モデリングを行い、自転が極端に遅い惑星の双子渦(極域の高気圧と低気圧のペア)の水平熱輸送や鉛直運動量輸送が大気大循環構造に与える影響を調査した。本年度はYamamoto and Takahashi (2016)を拡張し、惑星の自転速度と半径を変えた感度実験を行った。エクマン数と熱減衰数を一定にした条件で、自転周期を金星からタイタンの値に変えると、子午面循環が強くなり、子午面循環による水平方向の運動量輸送と熱輸送が大きくなる。子午面循環による極向き運動量輸送の鉛直積分値は擾乱による赤道向き運動量輸送とバランスするので、タイタンに近い自転周期ではGieraschメカニズムが有効に機能し,それに伴い帯状平均東西風が強くなる。
|