研究課題
固有磁場を持つ惑星は、例外なく惑星周辺に磁気圏と呼ばれる領域を持ち、そこでは活発なプラズマ輸送、エネルギー解放、粒子加速現象が発生している。これらの現象を駆動する物理過程は惑星により異なり、本研究では、木星を研究対象とすることにより、回転効果が卓越する磁気圏について詳細に調べ、磁気圏の普遍的な理解を目指す。ひさき衛星が2013年12月から2014年3月に実施した木星オーロラ及びイオプラズマトーラスの極端紫外分光観測データに基づき、木星内部磁気圏におけるプラズマ・エネルギー輸送過程に関するデータ解析を実施した。データ解析では、標準天体の観測により観測データの校正を実施したのち、木星オーロラ及びイオプラズマトーラスの時間変動特性の解析を行った。解析の結果から、木星内部磁気圏におけるプラズマの加熱源として、衛星イオ近傍で発電されたエネルギーが全体の20%程度を担うことが明らかとなった。エネルギー収支の検討結果から、衛星イオを通る磁力線の根元にあたる木星電離圏で電子加速が発生し、この加速された電子が木星内部磁気圏のプラズマ加熱に寄与している事を示す結果が得られた。また、連携研究者及び研究協力者の解析から、木星内部磁気圏のプラズマ輸送メカニズムとして、交換型不安定が重要な役割を果たしているとともに、太陽風に駆動されないトランジェントなエネルギー解放とプラズマ輸送が発生している事を示す結果が得られた。これらの成果は、いずれも磁気圏内部に衛星イオという強いプラズマ源を持ち、且つ、回転効果が強い事が関係していると考えられ、次年度以降の研究により、更に定量的な検討と、物理過程の解明を目指す。
2: おおむね順調に進展している
ひさき衛星により観測された極端紫外分光撮像データを校正し、木星内部磁気圏のプラズマ・エネルギー輸送の解析が進めることができている。研究成果は着実に挙がっており、研究協力者から2件の論文が出版されたほか、次年度当初には研究代表者からの論文が出版できる見通しである。
ひさき衛星打ち上げ後、2回目の木星磁気圏観測シーズンが始まり、2014年11月より観測を開始している。2015年1月には、木星の内部磁気圏内でプラズマ源が増大するイベントが検出され、磁気圏内部のプラズマ源の増大に対する磁気圏の応答を調べることが可能なデータセットが得られた。これによって、回転系の磁気圏に含まれるプラズマが多くなった場合に磁気圏内のプラズマ輸送、エネルギー解放がどのように変化するかを調べることが可能となると考えている。今後もデータ解析を進めるとともに、観測結果の物理的解釈を行うためのモデルの構築を実施して区予定である。
研究の進捗に合わせ、当初計画より成果発表旅費に助成金を割り当て、物品費を圧縮した結果、残金が発生した。
次年度の助成金と合わせ、成果発表に係る、旅費及び論文出版費用として使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件)
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