研究課題
平成27年度は、月が地球磁気圏衝撃波の前面(フォアショック領域)に存在しているときの現象に着目して、下記のことを明らかにした。月が太陽風中に存在しているとき、月の夜側にはウェイクと呼ばれる低密度領域が形成される。また、地球磁気圏の前面には定在衝撃波が形成されており、太陽風イオンが衝撃波面で加速されたうえ磁力線に沿って上流側へ反射される現象が知られている(この反射イオンが観測される領域をイオン・フォアショックと呼ぶ)。我々はこれまで月のウェイク領域への太陽風イオン流入過程を明らかにしてきたが、平成27年度の研究では、定在衝撃波で加速・反射された太陽風イオンが月のウェイクに流入することを明らかにするとともに、そのプロセスが月の電磁環境に大きな影響を与えることを明らかにした。具体的には、月の夜側表面から磁力線に沿って衛星に向かって上昇してくる電子ビームのエネルギーが、通常のウェイクでは100 eV前後であるのに対して、衝撃波加速イオンが流入するときには20 eV程度まで減少する様子が観測された。このことは、イオンの流入によって夜側月面の静電ポテンシャルが大きく上昇していることを示している。
3: やや遅れている
平成27年度は、月と地球磁気圏衝撃波に関する現象の解析を優先的におこなった。これは当初は予定していなかった解析であるが、 月の電磁環境に本質的な影響を与えている現象である。その解析を優先させたため、当初予定していた課題の解析は遅れている。
平成28年度は、主として下記の研究をおこなう。課題1(月の昼間側ので太陽風磁場の減少)と課題2(ウェイク電子分布の空間非対称)を実施する。電子の解析はJAXA宇宙科学研究所・齋藤義文研究室の大学院生と議論をしながら進めることとする。また、磁気異常付近でのプラズマの振る舞いを、神戸大学のシミュレーションのグループと共同して解析を進める。NASAの月観測衛星ARTEMISのデータとの比較研究にも着手する。
学会等への旅費に科研費以外の予算を使用できたため。
主として学会等に参加する際の旅費として使用する予定である。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)