地磁気擾乱時における電離圏電場分布の変動と電離圏擾乱ダイナモとの関係

2017 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 26400478
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 新堀 淳樹 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任助教 (30555678)
• 研究分担者: 堀 智昭 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任准教授 (30467344) [辞退] ; 小山 幸伸 大分工業高等専門学校, 情報工学科, 講師 (50598513)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: 電離圏 / 磁気嵐 / ダイナモ電場 / 電離圏電場 / 電離圏電気伝導度 / 地磁気静穏日変化

研究実績の概要

太陽フレアやそれに起因する太陽風変動に伴う磁気嵐時における電離圏擾乱ダイナモの時間・空間変動特性を明らかにするため、今年度は全球地磁気データに加えて全球測位衛星システム (GNSS)データの収集を行い、電離圏擾乱ダイナモに関連した電離圏全電子数(TEC)の変動特性の解析を行った。その結果、磁気嵐主相時においてTEC値の急増が昼間側中緯度から開始し、それが数時間の時間スケールで低緯度へ拡大していく様子が捉えられた。また、オーロラ帯ではオーロラ電子の降込みに伴う帯状のTEC増大が見受けられ、磁気嵐の発達とともに低緯度側へ移動していく様子が明らかになった。さらに、ある特定の地理経度におけるTECの地理緯度ー時間プロットにおいて高緯度から低緯度に伝搬するTECの波状構造が見受けられ、その要因は磁気嵐に伴って極域にインプットされた太陽風のエネルギーが駆動する熱圏擾乱によるものであると推察される。
一方、地磁気静穏日における電離圏ダイナモ電場の分布を明らかにするため、約60年に及ぶ長期間の地磁気データと電離圏電気伝導度モデル値を合わせた電離圏電場の空間分布の長期変動解析を行った。その結果、地磁気静穏日変化には明瞭な季節・太陽活動による変動が見受けられたが、推定された電離圏ダイナモ電場には明瞭な太陽活動による影響が見られず、逆に太陽活動極大期にその電場強度が減少するという傾向が見られた。さらに、地磁気静穏日変化振幅の長期変動特性についての最新の研究成果を論文にし、その結果を公表することができた。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、平成29年度から全球地磁気データに加えて全球測位衛星システム (GNSS)データの収集を行い、電離圏擾乱ダイナモに関連した電離圏全電子数(TEC)の変動特性を明らかにする研究に着手することができた。また、約60年に及ぶ長期間の地磁気データと電離圏電気伝導度モデル値を組み合わせた解析から、電離圏ダイナモ電場の短期・長期変動特性についても明らかにすることができた。さらに、地磁気静穏日変化振幅の長期変動特性についての最新の研究成果を論文にし、その結果を公表することができた。
以上のことから、研究自体はおおむね順調に推移していると判断できる。

今後の研究の推進方策

全球測位衛星システム (GNSS)データの収集を引き続き行い、磁気嵐に伴う電離圏擾乱ダイナモに関連した電離圏全電子数(TEC)の変動特性をイベント、統計解析の双方から明らかにする。また、前年度に得られた研究成果を2件の国際会議で招待講演として発表を行う。

次年度使用額が生じた理由

次年度において本研究で得られた最新の研究成果発表を行う予定の国際会議が5月、6月に3件（国内1件、海外2件）ほど組み込まれており、それらの国際会議への論文投稿料、参加費、海外渡航旅費に使用する予定である。また、それらの研究発表をまとめた論文を仕上げ、その投稿料にも充てることを計画している。

研究成果

• [雑誌論文] Propagation and evolution of electric fields associated with solar wind pressure pulses based on spacecraft and ground-based observations (2017)
  • 著者名/発表者名: N. Takahashi, Y. Kasaba, Y. Nishimura, A. Shinbori, T. Kikuchi, T. Hori, Y. Ebihara, N. Nishitani
  • 雑誌名: Journal of Geophysical Research 巻: 122 ページ: 8446-8461
  • DOI: 10.1002/2017JA023990
  • 査読あり
• [雑誌論文] Characteristics of Seasonal Variation and Solar Activity Dependence of the Geomagnetic Solar Quiet Daily Variation (2017)
  • 著者名/発表者名: A. Shinbori, Y. Koyama, M. Nose, T. Hori, Y. Otsuka
  • 雑誌名: Journal of Geophysical Research 巻: 122 ページ: 10796-10810
  • DOI: https://doi.org/10.1002/2017JA024342
  • 査読あり
• [雑誌論文] Ground-based instruments of the PWING project to investigate dynamics of the inner magnetosphere at subauroral latitudes as a part of the ERG-ground coordinated observation network (2017)
  • 著者名/発表者名: K. Shiokawa, Y. Kato, Y. Hamaguchi, Y. Yamamoto, T. Adachi, M. Ozaki, S.-I. Oyama, M. Nose, T. Nagatsuma, Y. Tanaka, Y. Otsuka, Y. Miyoshi, R. Kataoka, Y. Takagi, Y. Takeshita, A. Shinbori, et al.
  • 雑誌名: Earth, Planets and Space 巻: 69 ページ: -
  • DOI: https://doi.org/10.1186/s40623-017-0745-9
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Wire Probe Antenna (WPT) and Electric Field Detector (EFD) of Plasma Wave Experiment (PWE) aboard the Arase satellite: specifications and initial evaluation results (2017)
  • 著者名/発表者名: Y. Kasaba, K. Ishisaka, Y. Kasahara, T. Imachi, S. Yagitani, H. Kojima, S. Matsuda, M. Shoji, S. Kurita, T. Hori, A. Shinbori, M. Teramoto, Y. Miyoshi, T. Nakagawa, N. Takahashi, Y. Nishimura, A. Matsuoka, A. Kumamoto, F. Tsuchiya, and R. Nomura
  • 雑誌名: Earth, Planets and Space 巻: 69 ページ: -
  • DOI: https://doi.org/10.1186/s40623-017-0760-x
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] Temporal and spatial variations of the ionosphere and plasmasphere during geomagnetic storms as seen in global total electron content data (2018)
  • 著者名/発表者名: A. Shinbori, A., Y. Otsuka, T. Tsugawa, M. Nishioka
  • 学会等名: ISAR-5
  • 国際学会
• [学会発表] IUGONETデータ解析システムを活用した太陽地球結合過程研究の現状 (2018)
  • 著者名/発表者名: 新堀淳樹、田中良昌、梅村宜生、阿部修司、能勢正仁、上野悟、IUGONETプロジェクトメンバー
  • 学会等名: 太陽研連シンポジウム「太陽研究の将来展望」
  • 招待講演
• [学会発表] 様々な太陽地球環境データの統合解析を推進するためのIUGONETデータ解析システムについて (2018)
  • 著者名/発表者名: 新堀淳樹
  • 学会等名: 第369回生存圏シンポジウム 生存圏データベース全国共同利用研究成果報告会「モノのデータベースから電子データベースまで」
  • 招待講演
• [学会発表] 全球GNSS-TEC観測に基づく磁気嵐時の中緯度電離圏トラフの時間・空間変動特性について (2018)
  • 著者名/発表者名: 新堀淳樹、大塚雄一、津川卓也、西岡未知
  • 学会等名: 平成 29 年度 名古屋大学宇宙地球環境研究所 研究集会「電磁圏物理学シンポジウム」「地域ネットワークによる宇宙天気の観測・教育活動に関する研究集会」
• [学会発表] 全球GNSS-TECとあらせ衛星観測に基づく磁気嵐時の中緯度電離圏卜ラフの時間・空間変動特性について (2018)
  • 著者名/発表者名: 新堀淳樹、大塚雄一、津川卓也、西岡未知、熊本篤志、土屋史紀、松田昇也、笠原禎也
  • 学会等名: 「プラズマ圏の観測とモデリング」「ジオスペースにおけるプラズマ波動研究集会」合同研究集会
• [学会発表] Local time and seasonal variations of the amplitude of the main impulse (MI) of geomagnetic sudden commencements in the low-latitude and equatorial regions (2017)
  • 著者名/発表者名: A. Shinbori, T. Kikuchi, T. Araki, A. Ikeda, T. Uozumi, H. Utada, Commodore Romeo Ho, T. Nagatsuma, A. Yoshikawa
  • 学会等名: Japan Geoscience Union 2017
  • 国際学会
• [学会発表] Characteristics of long-term variation in ionospheric electric field estimated with geomagnetic solar quiet daily variation (2017)
  • 著者名/発表者名: A. Shinbori, Y. Koyama, M. Nose, T. Hori, Y. Otsuka
  • 学会等名: Japan Geoscience Union 2017
  • 国際学会
• [学会発表] Temporal and spatial variations of the ionosphere and plasmasphere during geomagnetic storms on the basis of global Total Electron Content (TEC) data analysis (2017)
  • 著者名/発表者名: A. Shinbori, Y. Otsuka, T. Tsugawa, M. Nishioka
  • 学会等名: Japan Geoscience Union 2017
  • 国際学会
• [学会発表] Current status of the IUGONET project (2017)
  • 著者名/発表者名: A. Shinbori, Y. Tanaka, N. Umemura, S. Abe, M. Nose, S. UeNo
  • 学会等名: Japan Geoscience Union 2017
  • 国際学会
• [学会発表] 全球TECデータ解析に基づく、磁気嵐時における電離圏・プラズマ圏の時間・空間変動について (2017)
  • 著者名/発表者名: 新堀淳樹、大塚雄一、津川卓也、西岡未知
  • 学会等名: PSTEPサマースクール陸別2017
• [学会発表] 全球TECデータに見られる磁気嵐時の電離圏・プラズマ圏の時間・空間変動 (2017)
  • 著者名/発表者名: 新堀淳樹、大塚雄一、津川卓也、西岡未知
  • 学会等名: 中間圏・熱圏・電離圏（MTI）研究集会
• [学会発表] 地磁気日変化の季節・太陽活動依存性について (2017)
  • 著者名/発表者名: 新堀淳樹, 小山幸伸, 能勢正仁, 堀 智昭, 大塚雄一、IUGONETメンバー
  • 学会等名: IUGONET 研究集会
• [学会発表] 地磁気静穏日変化の季節変化と太陽活動依存性 (2017)
  • 著者名/発表者名: 新堀淳樹, 小山幸伸, 能勢正仁, 堀 智昭, 大塚雄一
  • 学会等名: 地球電磁気・地球惑星圏学会第142回総会及び講演会
• [学会発表] 全球TECデータに見られる磁気嵐時の電離圏・プラズマ圏の時空間変動 (2017)
  • 著者名/発表者名: 新堀淳樹、大塚雄一、津川卓也、西岡未知
  • 学会等名: 地球電磁気・地球惑星圏学会第142回総会及び講演会
• [学会発表] Temporal and spatial variations of the plasmasphere and ionosphere during geomagnetic storms based on global GPS total electron content (TEC) data analysis (2017)
  • 著者名/発表者名: A. Shinbori, A., Y. Otsuka, T. Tsugawa, M. Nishioka
  • 学会等名: Korea-Japan Space Weather Workshop 2017
  • 国際学会
• [学会発表] Characteristics of seasonal variation and solar activity dependence of the geomagnetic solar quiet daily variation (2017)
  • 著者名/発表者名: A. Shinbori, Y. Koyama, M. Nose, T. Hori, Y. Otsuka
  • 学会等名: AGU Fall Meeting 2017
  • 国際学会
• [備考] 超高層大気長期変動の全球地上ネットワーク観測・研究
  • URL: http://www.iugonet.org/
• [備考] 名古屋大学教員データベース
  • URL: http://profs.provost.nagoya-u.ac.jp/view/html/100009803_ja.html