研究課題
本研究では、太陽風擾乱によって引き起こされる磁気嵐の発達期と衰退期の電離圏電場変動や熱圏中性風変動が与える電離圏電子密度構造への影響を評価するために、全球にわたる全電子数(TEC)データ、太陽風、地磁気指数、ならびに地磁気データの統合解析を行った。本解析では、磁気嵐時の電離圏変動を抽出しやすくするためにまず、地磁気擾乱日・静穏日リストから各月における地磁気静穏日10日分を選び出し、その日に該当するTECデータの平均値を求め、磁気嵐時のTEC値からその平均値を差し引いた。さらに、静穏日データを差し引いた値について静穏日の値で規格化を行った。その結果、磁気嵐の開始または惑星間磁場の南転から約1時間以内で、昼間側から午後側にかけての高緯度からサブオーロラ帯でTECの増加が開始し、その高TEC領域が磁気嵐の発達とともに低緯度側へ拡大していくことがわかった。その高TEC領域が低緯度側へ拡大する速度は、40-50 m/sと300-600 m/sの低速と高速の2種類があることも判明した。前者の低速で低緯度へ拡大する高TEC領域の高緯度側に狭い緯度幅を持ったTEC値の減少領域を示す中緯度トラフがあることから、この拡大速度は磁気嵐の発達に関連した電離圏対流の拡大速度を反映しているものと考えられる。一方、高速で低緯度側へ拡大する高TEC領域は、磁気嵐に伴うオーロラ活動の増加によって引き起こされた熱圏風によるものと推察される。また、午後から夕方側の磁気緯度20度以下の赤道域においてもTECの増大が観測され、磁気嵐の発達とともに高緯度側へ拡大し、高緯度から伝搬してきた別の高TEC領域と低緯度付近で一つになることも分かった。この観測事実は、赤道域に起源をもつとされる従来のstorm enhanced density (SED)の発生機構のみでは説明できないことを示唆する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
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