研究課題
中生代の海洋プレートの配置を地質学的に検討するため,北海道の常呂帯,空知層群,神居古潭帯の付加体やオフィオライトなど複数地域の地質図作成と化石年代や苦鉄質岩類の全岩化学組成,砂岩中の重鉱物の化学組成などを検討した.また,火成岩や堆積岩中のジルコンU-Pb年代の測定のルーチンを立ち上げ,年代測定を行った.神居古潭帯雁皮山コンプレックスでは,海洋プレートの変換時として重要な白亜紀中期の海洋プレート層序が明らかになった.同帯新冠地域では,ボニナイトを含む沈み込み帯型オフィオライトが前期白亜紀末の遠洋性赤色泥岩に不整合に覆われる,特異な層序を発見した.同帯の蓬莱山メランジでは,U-Pb年代から沈み込み開始直後と考えられる古いジルコンU-Pb年代を得た一方,西方の北部北上帯から最も若い付加年代を特定した結果,ジュラ紀後期~白亜紀最初期に二列の沈み込み帯が並立していたことを明らかにした.両者の間を占める空知層群では,オフィオライトの被覆層の基底礫岩の岩相や分布,砕屑物組成から,深海玄武岩からなる基盤がリフティングをおこしたことや,堆積当初から海洋性島弧由来の砕屑物が堆積したことなどを明らかにした.常呂帯では,白亜紀の堆積岩中には大陸起源の古いジルコンが全く含まれない一方で古第三紀には大陸からの砕屑物供給が始まったことや,白亜紀堆積岩の主要な砕屑物供給源が島弧であったことなどを明らかにした.これらは,中生代の太平洋に複数の海洋性の島弧-背弧系が存在したとする仮説を支持する.以上の研究成果の一部は英文誌に投稿中であり,現在も引き続き成果の論文化を進めている.
3: やや遅れている
予想外の興味深い成果も含めて,研究はおおむね順調に進行し成果を上げた.中央北海道での海洋プレート沈み込みの開始年代を特定するため,高圧変成のAr-Ar年代測定を発注したが,原子炉の稼動の事情から期間内に測定が終了せず,予算の一部を繰り越して測定結果を待っている段階にある.
本研究課題で検討した,各地の多様な付加体やオフィオライトのからは,それぞれ新しく重要な成果が得られた.しかし,それらの初生的な相互関係,成因関係には不明な点も多く残されている.本研究により包括的な海洋プレート古地理の復元に対する仮説を立てることができたが,その実証のため,今後も野外調査を継続してデータを補充するとともに,地域間の対比を進める必要がある.また,調査や比較検討の範囲を西南日本や海外に広げて,より広域的なプレート復元モデルの構築に発展させたい.
外注したAr-Ar年代が,原子炉稼働状況の事情で年度内に完了できなかったため.
H28年度に発注済みであり,H29年度中に完了し次第支払う予定である.
共同研究者らとともに,北海道と東北地方北部の三畳紀石灰岩の調査とサンプリングを実施した.
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
Geochemical Journal
巻: 査読中 ページ: 査読中
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Island Arc
In Moreno, T., Wallis, S., Kojima, T. & Gibbons, W. (eds), The Geology of Japan. Geological Society, London
巻: (単行本) ページ: 201-221
10.1144/GOJ.8
In Harff, J., Meschede, M., Petersen, S., and Thiede, J. (eds.), Encyclopedia of Marine Geosciences, Springer
巻: (単行本) ページ: 311-315
10.1007/978-94-007-6644-0_113-1
巻: (単行本) ページ: 367-371
10.1007/978-94-007-6644-0_114-1
https://www.researchgate.net/project/Upper-Triassic-Lower-Jurassic-reef-and-carbonate-build-up-development-as-recorders-of-biotic-environmental-and-climatic-changes-REEFCADE-continuation
https://www.researchgate.net/publication/312377845_Triassic_Limestones_from_Hokkaido_Japan_A_new_insight_on_the_Panthalassa_Ocean