研究課題
平成28年度は平成27年度までに採取できていなかった掘削試料の採取許可を北オーストラリアのコアリポジトリより得て、現地に赴き試料の採取を行った。約150試料を採取し、窒素同位体比と鉄同位体比を測定するために岩石薄片の作成と粉末試料の作成を行い、分析準備を進めた。また、先行研究で得られた堆積環境の酸化還元状態に基づき、これまでに測定した窒素同位体比をもとに中期原生代の窒素循環についての議論を行い、国内・国外の学会で発表を行った。現時点で本研究によって新たに判明したことは次の2つである。1)遠洋部においても硝酸の枯渇は見られず、浅海域と同様の酸化的な窒素循環が観察された先行研究による北アメリカ、北オーストラリア中期原生代の窒素循環についての研究では、遠洋部では沿海部に比べて窒素同位体比が低く、遠洋部では硝酸が枯渇していたと考えられてきた。これに対して本研究では中期原生代全体(約3億年間)、約300試料の窒素同位体比の分析を行ったところ、遠洋部でも沿海部とほぼ同じ2-3‰の硝酸の窒素同位体比を示し、硝酸の枯渇は見られないことが判明した。2)炭素と窒素の比率から酸化的な沿岸部の堆積岩と還元的な遠洋部の堆積岩ではC/N比が大きく異なる試料があることが判明したこのことから沿岸部と遠洋部の一部では生息していた生物種に違いがあることが推定された。この違いを先行研究の微化石のデータおよび分子化石のデータと対比すると、真核藻類の生息域とシアノバクテリアの生息域に対応していると考えられた。現在は、これまでに得られた結果から中期原生代の窒素循環についての議論をまとめ、投稿に向けての準備を行っている。当初本研究では窒素同位体比に加えて鉄同位体比の測定も行う予定であったが、機器の故障のため研究期間内に行うことができなかった。鉄同位体比の測定は今後行う予定である。
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Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
巻: 459 ページ: 182-197
doi.org/10.1016/j.palaeo.2016.07.008