研究課題
平成26年度には,以下のような研究を実施した.(1)越美山系および紀伊半島東部における山体重力変形地形の電気探査越美山系,冠山北西の県境稜線上にみられる二重山稜の間の線状凹地において電気探査を実施し,堆積盆の地下構造がハーフグラーベンであることを明らかにし,この二重山稜地形は,南北にのびる稜線が東側に深層崩壊を起こす前兆現象であることを示した.また,紀伊半島東部,ツエノ峰の北の二重山稜の間の線状凹地においても同様な解析を行なった.さらにツエノ峰においては,過去の深層崩壊によって形成されたせき止め湖が堆積物によって埋められた平坦面でも電気探査を行い,堆積物下に存在する天然ダムをイメージングすることができた.(2)北アルプス長塀尾根上の二重山稜地形の解析北アスプス南部,蝶ヶ岳から南西にのびる長塀尾根には多くの山体重力変形地形が認められる.このうち,標高2,000m付近にみられる二重山稜地形の間の線状凹地を埋める堆積物をハンドオーガ―ボーリングにより掘削し,その層相がいずれの地点においても,上位から腐植土層,灰色粘土層,褐色シルト層(一部礫質)からなることを明らかにした.灰色粘土層付近の層準に,鬼界アカホヤ火山灰(約7,300ka)に特徴的な屈折率をもつ火山ガラスの含有率のピークが認められることから,これらの地形は,おおよそ1万年前に形成されたものであることがわかった.現在,このコアから採取した植物片の放射性炭素同位体年代を測定中である.
1: 当初の計画以上に進展している
交付申請書執筆時には,平成26年度の年度計画として,越美山系,紀伊半島,長塀尾根において野外調査とハンドオーガ―ボーリングを行い,試料採取とテフラ分析およびAMS-14C年代測定による堆積物の年代決定を行なうことを計画した.これらの計画は,名古屋大学年代測定総合研究センターのタンデトロン加速器質量分析計の故障により遅れている14C年代測定を除けば,全て達成することができた.それに加えて,越美山系と紀伊半島においては電気探査による地下構造解析を実施することができ,本研究は当初の計画以上に進展している.また,9月にイタリアで開催された国際応用地質学会(IAEG)において,過去に得られた成果とともに本研究の成果を発表することができた.
当初計画では,越美山系,紀伊半島,長塀尾根に加えて四国等でも同様な研究を行なう予定であったが,四国以外の地域(例えば,北アルプス徳本峠地域や南アルプス南部)も視野に入れ調査対象地域を検討中である.また,地域的拡大よりは,新しい手法(例えば本年度実施した電気探査や地震波探査など)を行なう方が実り多い成果が得られる可能性があり,現在,その可能性を検討している段階である.
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