研究課題
平成27年度には以下のような研究を実施した.(1)紀伊半島東部における山体重力変形地形の地震波探査:(a)紀伊半島東部ツエノ峰の北の二重山稜間の線状凹地,(b)過去の深層崩壊によって形成されたせき止め湖の2カ所において,形成後,堆積物によって埋められた平坦面上で地震波探査を行った.両地点においては,平成26年度に電気探査を実施し地下構造を推定している.異なる方法で検討した地下構造はよい一致を示し,山体重力変形地形やせき止め湖を埋積した泥質堆積物と,ある程度固結した基盤岩の地震波速度・電気比抵抗は両者を区別するに十分なコントラストを持つことを示すことができ,両手法が山体重力変形地形の基盤構造推定に有効であることを示すことができた.(2)北アルプス徳本峠北東の二重山稜地形の解析:北アルプス,徳本峠と大滝山間の標高2000m程度の稜線には多くの二重(多重)山稜地形がみられる.当該地域の1mメッシュDEMを用い地形解析を行い,深層崩壊との関連を考察した.また,二重山稜間凹地埋積堆積物をハンドオーガーでボーリングし,堆積物の厚さと層相を検討した.その結果,本地域は活火山(おそらく焼岳)の活動の影響を強く受け,火山砕屑物を主体とする地層で埋積されていることが明らかとなった.
2: おおむね順調に進展している
平成25年度に北アルプス,長塀尾根で掘削した二重山稜間凹地埋積堆積物中に含まれる木片等の放射性炭素同位体年代は「未来の年代」となり,年代決定はできなかった.その理由は不明である.平成26年度に北アルプス,徳本峠北東地域で掘削した二重山稜間凹地埋積堆積物中は近傍の火山からもたらされた火山砕屑物を主体とし,広域テフラによる年代測定が困難であることが判明した.以上のような,研究遂行上の困難には遭遇しているが,研究は当初計画通りおおむね順調に進展している.また,「山体重力変形地形は深層崩壊の前兆現象である」という,研究計画立案時に想定した作業仮説とは異なる研究成果も得られており,興味深い研究成果が得られることが期待される.
平成28年度は,本研究の最終年度にあたるため,北アルプスで追加調査を行うとともに,研究の取りまとめを行う.本研究の研究成果は,Kojima et al.(2015)として論文発表したが,過去2年間の研究成果についても,学会発表,論文発表する予定である.
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