研究課題/領域番号 |
26400488
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
星 博幸 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (90293737)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地質学 / テクトニクス / 島弧衝突 / 回転運動 / 古地磁気 / 岩石磁気 |
研究実績の概要 |
本州弧と伊豆弧の衝突に伴う本州中部(特に関東山地)の地殻回転の実体を解明し,その上で「地殻回転運動」と衝突によって生じたとされる「約15 Maの広域不整合(庭谷不整合)」との関連性の有無を検証するために,本年度は関東山地内に位置する五日市盆地および山地縁辺部に位置する富岡地域において回転運動を定量的に求めるための古地磁気学的研究を行った。 五日市盆地ではまず,地質構造と岩相層序を把握するための地質調査を実施した。次に,盆地中央部を流れる秋川とその支流において23地点で庭谷不整合よりも古い堆積岩を採取し,古地磁気測定と岩石磁気実験を行った。その結果,約半数の地点で信頼できる古地磁気方位が決定された。残留磁化の主要な担い手は磁鉄鉱と推定される。これらの方位は褶曲テストと逆転テストに合格したため,初生的な古地磁気方位と解釈できる。これらの平均方位の偏角は約100°の東偏を示し,関東山地において約16 Ma以降に90~100°に達する時計回り回転運動が起こったことを示唆する。 富岡地域では,庭谷不整合直上の庭谷層(約15~14 Ma)の地質調査と古地磁気測定を行った。鏑川とその支流において庭谷層の29地点から堆積岩を採取した。測定データは現在解析中であるが,残留磁化の安定性は五日市盆地堆積岩の残留磁化に比べてやや低いようである。それでも,五日市盆地同様,時計回り回転運動が起こったことを示唆する解析結果が得られつつある。ただしその回転量は五日市盆地よりも小さいようである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画書に記載した五日市盆地の地質調査・古地磁気測定を予定通り実施でき,回転運動も定量的に求めることができた。この地域を調査地域に選定したのは,褶曲テストによる古地磁気方位の信頼性の検討を期待したためだが,期待通り,褶曲テストによって古地磁気方位の信頼性を定量的に判定することができた。五日市盆地については当初の計画以上に進展していると言える。 当初の実施計画では,初年度に岩殿丘陵でも調査・サンプリングを行う計画であったが,予察的な地質調査の結果,岩殿よりも富岡地域で先にデータを出したほうが関東山地全体の回転運動と不整合の関係を推定するのに好都合と考えたため,岩殿よりも先に富岡地域で調査することにした。今年度,富岡では庭谷層の地質調査と古地磁気測定を実施したが,本地域ではより上位の地層からも古地磁気データを取得したいので,この地域についてはおおむね順調に進展していると判断できる。 これらの達成度を総合すると,現時点ではおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進展していると判断できるため,27年度も研究計画に沿って地質調査と古地磁気測定を進める予定である。 27年度は,前年度に測定した富岡地域庭谷層の古地磁気データの解析を終え,庭谷層堆積以後の回転運度を求める。庭谷層も緩やかな褶曲構造に参加しているため,五日市盆地で実施したような褶曲テストを適用し,古地磁気の信頼性をチェックしたいと考えている。さらに,庭谷層よりも上位の地層の地質調査と古地磁気測定も進める予定である。上位層には褶曲構造が認められないため,データの信頼性は岩石磁気実験と古地磁気層序の検討によって検討することを想定している。 27年度は岩殿丘陵と比企丘陵の予察的な地質調査を行い,どちらかの地域で古地磁気サンプリング・測定を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
できるだけ無駄な支出を抑えるように務めた。物品も最低限のものに限定し,旅費も最小限に抑えた。その結果,若干の次年度使用額が生じたと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度は野外調査等の出張を多く計画しているので,そのために使用したい。勿論,無駄な支出を抑えるように引き続き努力するつもりである。
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