研究課題/領域番号 |
26400489
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
宮田 雄一郎 山口大学, 理工学研究科, 教授 (60253134)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 砂層の液状化 / 粒子ファブリック / タービダイト |
研究実績の概要 |
上総層群梅ヶ瀬層の塊状タービダイト砂層の一部には,(1)コンボリュート葉理や(2)皿状構造,(3)ストロー状構造などの脱水構造の他に,(4)下位の泥層の破壊や(5)砂脈,(6)泥脈,(7)逆ロート状構造などの流体注入を示す変形がみられる.また泥層の最上部にも破壊構造が認められることがある.タービダイト層の多くは,帯磁率が下部ほど高いが,塊状均一であるため,肉眼でわかる変形構造は少ない.しかし,粒子ファブリックは,明確な面構造と40度におよぶ高角度のインブリケーションで特徴付けられる.帯磁率分布は,初生堆積構造を反映しているため,その乱れがあれば,何らかの変形や破壊が疑われる.そこで,変形した可能性の高い塊状タービダイト層について粒子ファブリックに着目して,砂層断面のはぎとり試料の写真から,画像処理ソフトImageJおよび地理情報ソフトGMTを用いたファブリック解析を行い粒子組織で変形組織を可視化した.その結果,肉眼では全く確認することができない(F1)砂層最下部の部分的急傾斜組織,(F2)ランダム組織,(F3)水平組織,(F4)ブロック状組織,(F5)逆ロート状組織,(F6)脈状組織,(F7)流動褶曲組織,および(F8)皿状組織などの変形組織が数mの範囲に限って可視化検出された.これらの変形組織は帯磁率分布に対応していた.肉眼的に認められる上記(1)~(7)の変形構造と併せると,このような変形組織・構造は層厚200mの区間で,限られた層準においてその多くが単一の砂層内(最大でも高さ10m以内),幅数mの範囲に部分的に分布しており,側方延長部には変形の痕跡が少ない.この特徴は,上部ほど変形が顕著で側方に均一な液状化変形の特徴とは異なっている.液状化実験によると砂層の上部ほど粒子長軸方位が大きく分散するが,外力が作用しない限り上下方向の相互貫入や流動は生じなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
梅ヶ瀬層塊状タービダイト砂層の中で,変形の認められる砂層の確認作業を進め,層数や試料数を増やして粒子ファブリックデータを取得することができた.また,以下の点は,調査・実験結果の信頼性向上につながった. 1.液状化実験において振動加速度と継続時間の異なる砂層の粒子ファブリックを比較し,液状化の程度が大きいほど粒子長軸方位の分散が拡大することなど,新たな知見が得られた. 2.粒子ファブリックの計測と集計方法を改良し,従来に比べて短時間で高精度の結果を得ることができるようになった.さらに,写真計測による3次元粒子ファブリックについても計測と解析法の開発を進めている. 3.梅ヶ瀬層塊状タービダイト砂層からは,4mを超える大型剥ぎ取り試料を採取して粒子ファブリックを計測した結果,変形の様式だけでなくその変形スケールや分布についても情報を得ることができるようになった. さらに,液状化とは考えられない砂層の変形については,とくにガスが関わった可能性が疑われ,その場合の変形様式については,実験的な検証を検討している.液体と気体を砂層に注入する実験を予察的に進めている.
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今後の研究の推進方策 |
液状化以外の砂層の流動変形は,梅ヶ瀬層以外にも知られており,九州・四国・和歌山の四万十帯南帯の前弧海盆堆積物にも海岸地域の良好な露頭において類似した未固結変形構造が見受けられる.共通した背景としてメタンガスの上昇が考えられ,ダイアピル構造を伴うことがある.このような情報を精査することも成因を検討する上で重要と考えている. 気泡を含んだ流体上昇による流動変形に着目した実験を行い,それらに共通した地質現象の枠組みで捉えていきたい.最終年度にあたって,とくにガスの役割に着目した変形メカニズムの解明とともに地質的背景を考慮した成因を明らかにしたい.
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