研究課題
千葉県の更新統上総層群では顕著なコンボルート葉理を示すタービダイト砂層は液状化実験の結果とも符合しており,液状化の痕跡とみなすことができる.しかし,そのような砂層は稀であって多くの砂層は未変形で,初生堆積構造を維持していた.一方で,梅ヶ瀬層の塊状タービダイト砂層の一部にしばしばみられた流動変形は,液状化変形の特徴も粒子ファブリックも示していない.これらは,その分布や内部構造からみて流体注入が疑われた.流体として水のほかガス,およびそれら両者を砂層に注入する実験を行ったところ,類似した破壊構造を再現することができた.流体注入の原因としてはガスハイドレートの分解が強く示唆される.一方で,固結した砂岩層に対してははぎ取り試料を用いたファブリック解析手法が使えない.和歌山県四万十帯の固結した中新統前弧海盆堆積物(田辺層群・熊野層群)について,砂岩の岩石物性を測定した.P波・S波速度,かさ密度,粒子密度,間隙率を約600試料について計測したところ,これらは地域的に大きなばらつきを示し,近い層準でも大きく異なるばかりか,同一砂岩層でも側方にメートル単位で数10%も異なっていた.しかし,弾性波速度は間隙率とともに変化し互いに高い相関を示す.すなわち,砂岩層内の間隙率分布が不均一であることを意味している.一部に,液状化によるコンボリュート葉理を示す砂岩層があり,同等のP波速度をもつ他の砂岩より間隙率が低かった.これは振動による粒子の再充填の結果と思われる.以上のことから,海洋プレート沈込み帯で形成された前弧海盆堆積物の砂層・砂岩層であっても,明確な液状化の痕跡をもった層は少ないことがわかった.堆積速度からみてほぼ全ての砂層が海底表層で地震動を経験していると想定されるにもかかわらず,このような結果になったことは注目に値する.
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