研究課題
本研究は火山活動し研究に古地磁気変動を利用できることを示すのが目的である。第一段階として、阿蘇火山中央火口丘群の溶岩流の古地磁気研究をまず進めた。第一年度に見出した、K-Ah 以降の、3Ka 前後に噴火した、中央火口丘北西部の玄武岩質火山の対比について、古地磁気方位を精査した。当大学の長谷中利昭教授の協力で、化学分析も行った。結果は、古地磁気方位分類と整合的なサイトや、古地磁気方位では区別可能であるが化学組成では見分けのつかないものもあった。全体的な整理が必要である。近距離のテフラの測定も行った。本研究に必要な精度の高い定方位試料採集技法は確立できたが、一連のテフラの古地磁気方位の変動が想定したより小さくなっている。これは、テフラの対比の問題か、磁化の安定度の問題か検討している。当研究室では、並行的に考古地磁気測定を行って来たが、古地磁気永年変化を火山噴出物の対比/年代推定に重要な貢献ができる状況に至ったので、加速することとした。5世紀から9世紀の考古地磁気試料の測定で、この期間の古地磁気永年変化を今までにない精度で決定することができた。一方、より古い年代の火山岩については、巨大噴火と直前の溶岩流との関連の研究を試した。これは、以前に我々が測定した、Aso-2 溶結凝灰岩と飽田溶岩の古地磁気方位の研究から発想したものである。これらの溶岩はほぼ一致した古地磁気方位を有しており、大規模火砕流の前駆現象の有無と時間間隙を見る上で興味深いものであった。本年度は Aso-4 の直前に噴火したと見られる大峰火山のスコリアと高遊原溶岩の古地磁気測定を行った。結果はサイト間での対比が難しいなど問題はあったものの、Aso-4 溶結凝灰岩の古地磁気方位とは明確に異なり、100年以上の時間間隙があったことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
データの集積と手法の確立等は順調に進展している。また、考古地磁気などのデータとの関連も見出されて、興味深い発展が見えている。得られた知見は多岐にわたるが、いずれも、古地磁気学の火山学への貢献の可能性を明白に示しており、この方向が極めて有望である。研究成果の報告は、地球惑星化学連合大会、地球電磁気・地球惑星圏学会、American Geophysical Union などで、報告した。論文については、投稿後難航しており十分ではないが、材料は揃っているので、来年度中には出版できると考えている。
昨年度からの推進の予定のうち、(1)古地磁気強度の研究(2)他地域での適用を試みる、の2点を十分推進できなかったので、本年度はそれらを進めたい。古地磁気強度研究については、試料は既存のものを利用できる。また、手法については、2回加熱ショー法については、本研究室は豊富な経験を有しているので、推進する。この方法は、比較的短時間で多数の測定が可能であるので、多数のサイトの比較を行う上で重要である。その際には岩石磁気学的測定を行うが、それ自身も溶岩の対比に寄与できないか検討する。他地域での適用については、試料採集を進めているところである。特に、考古地磁気学のカバーする年代の溶岩をリサーチしていきたい。昨年度、伊豆大島、三宅島の試料採集を行ったので、測定を進める。その一方、考古地磁気永年変化曲線のデータからの近似法について、パラメータリゼーションを含めて検討し、最適なものを得たいと考えている。他のサブテーマについても、今年度の結果を踏まえて、詰めの測定を行い、発表していきたい。
繰越し額は些少で、本年度分と合算して使用する方が有益に使用出来る。
本年度分と合算して消耗品購入に使用する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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