研究課題/領域番号 |
26400491
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
鹿野 和彦 鹿児島大学, 総合研究博物館, 教授 (40356811)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 爆発的海底噴火 / 水冷火山弾 / 水冷破砕 / 自破砕 / マグマ噴火 / マグマ水蒸気噴火 |
研究実績の概要 |
水深200~1500mの海底に噴出したとされている松江市諸喰付近の前期中新世安山岩は、水に急冷されて生じた細かな収縮割れ目が発達する水冷火山弾とその砕片からなる水中降下堆積物と噴火に直接由来する水底密度流堆積物などからなり、法田から馬上り鼻まで東西2.5km南北0.8kmの範囲に分布する。馬上り鼻東方では同質の水冷自破砕溶岩・枕状溶岩がこれに重なる。火砕岩と直下の黒色泥岩との間には上方に朝顔状に開いた火砕岩と同質の安山岩が貫入している。これは火砕岩と同源で、そこから派生した岩脈は火砕岩に貫入してペペライトを形成している。 火山弾は水冷された徴候が顕著で有り、段階的に熱消磁したところ、590~620 ℃で磁化強度が初生磁化の5%に減少したことから、これより高温で水中に放出されたことが示された。この熱残留磁化は偏角141.4°、伏角-58.8°付近に集中しており、着底直前から直後にかけて磁化し、そのまま定置したことがうかがえる。火山弾の気孔を対象とした直径と累積数密度との関係、直径に対する数密度の比と直径との関係は、気泡の核形成と成長、合体が連続的に進行したことを示す。しかし、火道を上昇中にこれらが起こったとしても、数密度(100~700/mm^3)、孔隙率(15~28%)とも爆発的噴火を起こすには気泡の数も体積も小さすぎることもわかった。このことは、噴火に直接関係した気泡はマグマ溜まり上部に濃集して合体し成長して、マグマとともに浮力を得て火道を上昇し、水中で爆発したことを示唆する。その結果生じた降下堆積物がその後の噴火で崩壊し、密度流が発生すれば火山弾とそれらの砕片からなる密度流堆積物がもたらされる。火山礫・粗粒火山灰粒子主体の多重層は、気泡が少ないにも関わらず破断が進行していることから、火道に流入した水とマグマとの爆発的反応(マグマ水蒸気噴火)で生じたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究対象とした火砕岩の分布が予想よりも広い範囲に分布していて、船でないとアクセスできない露頭があることもわかった。このため、火砕岩がなす火山の形態の把握と追加試料の採取に手間取り、データ処理が遅れているところがある。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年度目の調査研究対象が地理的に近く、また、研究手法も共通していることから、これと併せて遅れている作業を補う予定である。
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