研究課題
ペルム紀以前(約2億5千万年前以前)の「日本列島」がどこに在ったか、については、詳細はいまだにわかっていない。これの解明のためには、砕屑性ジルコン年代を用いた後背地推定が有効である。 本年度は、黒瀬川帯に属する高知県の横倉山層群にて調査及び試料採取を行い、年代不詳のブロック状岩体、基盤の花崗岩及びその直上の砂岩を採取した。それらの試料よりジルコンを抽出し、国立科学博物館のLA-ICP-MSを用いて年代測定を行った。横倉山層群は周囲を蛇紋岩に囲まれており、その蛇紋岩中には雑多な岩石が取り込まれるように含まれている。今回は、その中の変はんれい岩の年代測定を行った。その結果は横倉山層群の基盤を成すとされる花崗岩類と周囲に存在するオルドビス紀(約4億5千万年前)花崗岩と大差はなかった。一方で、横倉山層群堆積開始時の後背地推定に役立つと期待された「基盤直上の砂岩」は、ジルコン年代測定の結果、少なくともジュラ紀以降に堆積したものであることが判明した。横倉山層群の周囲にはジュラ紀の付加体である秩父帯が広く分布しているため、今回の砂岩の結果が試料の汚染である可能性も考慮した。しかし、今回の試料の洗浄は入念に行っており、その可能性は少ないと考えられる。また、年代分布中で卓越するはずである周囲の花崗岩起源の4億5千万年前のジルコンは約100粒の測定に対して1粒も存在せず、これは統計的にも「ほぼ存在しない」と言えるものである。この結果から言えることは、①この砂岩が全くジルコンを含まず、今回のジルコンは全て周囲の付加体からの汚染起源である、②この砂岩がジュラ紀以降のものである、のどちらかであるが、常識的には②が妥当であろう。だとすると、この結果は横倉山層群の周囲の花崗岩との構造的断絶を意味しており、構造の再検討が必要であることを示している。
2: おおむね順調に進展している
当初は福島の調査を予定していたが、現場の交通状況を考慮して高知県に変更した。今回得られた結果は予想に反したものではあったが、他地域を調査する際の参考となる点があった。また、試料の収集は当初の計画から多少遅れているものの、試料の精製および分析は予定よりも進んでいるために、総合としての達成度はおおむね順調である。
今後の調査の重点的は地域として、福島県相馬地域、京都府舞鶴地域、富山県黒部地域及び熊本県中部を考えている。27年度はこのうち2か所以上からの試料採取を目論んでいる。採取した試料は迅速に処理し、翌年には公表できるようデータを得る予定である。
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茨城大学教育学部紀要
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