黒瀬川帯ペルム系砕屑岩の後背地解析から,アジア大陸東縁におけるペルム紀島弧発達過程を復元した.四国中央部伊野地域周辺及び東部北川地域に分布する黒瀬川帯ペルム系について,従来報告されている放散虫化石年代,及び本研究で分析した砕屑性ジルコンU-Pb年代(最若ピークの加重平均値)を基に,中期ペルム紀及び後期ペルム紀の付加体,後期ペルム紀の前弧海盆堆積物に区分した. 中期ペルム紀付加体は,伊野層の弱変成岩・上倉層・勘場谷ユニットから構成される.いずれも後期三畳紀~前期ジュラ紀の間に,パンペリー石~アクチノ閃石相の変成作用を受けている.後背地は,安山岩~珪長質火山岩を主体とする. 後期ペルム紀付加体は,新改ユニット・土佐山ユニット・檜曽根ユニット・沢谷ユニットからなる.後背地は,より珪長質火山岩の影響を強く受ける.また沢谷ユニットに関しては,中期ペルム紀付加体と同様に,後期三畳紀~前期ジュラ紀の間に変成作用を受けている. 前弧海盆堆積物は,市ノ瀬層及び拝宮層群からなる.石灰岩や花崗岩を含む礫岩を特徴とする.砕屑性ジルコン年代は,市ノ瀬層は後期ペルム紀を示したが,拝宮層群は前期ジュラ紀を示した.そのため,拝宮層群の堆積年代とその帰属については再考が必要である.市ノ瀬層の砂岩は,玄武岩~安山岩質火山岩を主体とする.一方,後期ペルム紀の花崗岩礫も含むことから,多様な火成岩が分布する後背地が想定される. 以上のことから,中期~後期ペルム紀にかけて島弧火成活動が,安山岩質からより珪長質火山岩へと変遷したと考えられる.その一方で,市ノ瀬層に含まれる後期ペルム紀花崗岩礫の存在は,急速な花崗岩の開析が起きていたことを示唆する.
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